Restek
Home / Resource Hub / Technical Literature Library / 乳製品中のPFAS分析用の高感度なLC-MS/MSメソッド

乳製品中のPFAS分析用の高感度なLC-MS/MSメソッド

articleBanner

要約

ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は日用品に広く使用されてきました。PFASは非常に安定した化合物であるため蓄積しやすい性質を持っています。日用品の製造プロセスや廃棄処理の途中で適切な処理がなされないと、PFASは水源や土壌にも蓄積し、環境汚染につながります。汚染された環境で生産された食品を口にすれば、体内へのPFASの蓄積も進んでしまいます。食品の中でも特に心配なのは乳製品です。乳製品の製造過程で使用される水や飼料、また食物連鎖を通じて蓄積し続けた脂肪などにPFASが蓄積されていることが考えられるからです。そこで、高濃度なPFASが検出される確率が高い乳製品を徹底的に、かつ正確に分析することが重要になってきます。私たちは、0.01㎍/kgの高レベルまで検出可能なLC-MS/MSで、乳製品中のPFAS分析用の高感度で信頼性の高い分析メソッドを開発しました。

はじめに

ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は様々な用途および製品に使用されている人工的な有機化合物の一種です。PFASは長い炭素鎖(通常は4つ以上の炭素原子)に複数のフッ素原子が結合している構造を持っていますが、この炭素ーフッ素結合は非常に安定しているため、環境中で簡単には分解されません。これが、飲料水、土壌、廃水、食品、また、生物体内の体液や組織などの生物学的マトリックスでPFASが検出される理由です。PFASとの接触(PFASへの曝露)は、コレステロールの増加、出生体重の低下、ワクチンに対する抗体反応の低下、腎臓癌や精巣癌、妊娠高血圧(前期胎盤癒着症)、肝酵素の変化などといった健康への悪影響の原因となる可能性があります[1]。PFASとの接触は主に食品を通じてであることが分かっているため、生産、製造されている食品中のPFASをモニタリングする、高感度で信頼性の高い分析メソッドの重要性が高まってきています。

乳製品は世界中で60憶人以上によって消費されている[2]ため、乳製品内のPFAS汚染のモニタリングは不可欠です。欧州食品安全機関(EFSA)が調査および評価を行ったのは、下限曝露(健康に影響を及ぼさないとされる、特定の物質に関する最低限の曝露量。これを超えると健康リスクがあるとされる閾値となる。)の半分を占める、つまり、健康リスクを評価する際に注目すべき、以下の4種類のPFASペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、およびペルフルオロノナン酸(PFNA)です。幼児や小児は、大人よりも乳製品や乳製品を使った食品の摂取が多いと考えられるので、PFASへの曝露量が2倍になることが分かっています[3]。EFSAはこれら4種類のPFASへの曝露を、体重1kgあたり週4.4ナノグラムを超えないように制限することを推奨しています[3]。米国メイン州農業・環境・森林省(DACF)は、乳製品1リットル中に210pptのPFOSが含まれている場合、これを閾値として、何らかのアクションを起こすことを決定しました[4]。

私たちが開発した、乳製品中のPFASをLC-MS/MSで分析するメソッドを紹介しましょう。このメソッドはEFSAが評価を行った4種類のPFASと、飼料および食品中のハロゲン化残留性有機汚染物質(POPs)に関するガイダンス文書に含まれる24種類の化合物(PFAS)とを分析対象にしています。このガイダンス文書は、EFSAによって特定された4種類のPFASの乳製品中における定量限界(正確に測定できる最小の濃度:LOQ)が0.01 µg/kg以下であるべき、と示しています。この目標LOQを28種類のPFASすべてに適用し、以下の実験を行いました。ひとつ気がかりなのは、胆汁酸などの共に抽出される物質がある場合に分析が複雑になることです。胆汁酸には、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)、およびタウロデオキシコール酸(TDCA)がありますが、これらは生物由来のサンプル中に高濃度で存在する可能性があり、PFOSと同じMSトランジションを持ちます。PFOSを正確に定量するために、サンプル前処理の段階で胆汁酸をサンプルから除去するか、クロマトグラフィーで胆汁酸とPFOSを分離することが必要です。これを考慮して、乳製品中の28種類のPFASを分析するワークフローを開発しました。dSPEとQuEChERS法を組み合わせてサンプル前処理を行いました。このワークフローでEFSAが評価を行った4種類のPFASの分析を行いましたが、その結果は信頼性がある良好なものでした。また、ほとんどのターゲット化合物(PFAS)を高精度かつ高い再現性をもって分析できることが分かりました。

実験

クロマトグラフィー法

乳製品中のPFASのLC-MS/MS分析は、Waters XEVO TQ Absoluteトリプル四重極質量分析計を使用したWaters ACQUITY Premierシステムで行いました。インジェクタより上流の潜在的なPFAS汚染がサンプル中のPFASと共溶出するのを防ぐために、ミキサーとインジェクタの間にPFASディレイカラムを取り付けました。分析の条件は以下の通りです。

カラム:

  • 分析カラム: Force C18, 50 mm x 2.1 mm, 3 µm (cat.# 9634352)
  • ガードカラム: Force C18 EXP, 5 mm x 2.1 mm (cat.# 963450252)

PFASディレイカラム, 50 mm x 2.1 mm, 5 µm (cat.# 27854)

注入量: 5 µL

移動相A: 水、5mM酢酸アンモニウム

移動相B: メタノール:アセトニトリル (50:50)

流速: 0.6 mL/min

温度: 50 °C

グラジエント:  

時間 (分) %B
0.00 5
3.00 40
9.00 70
9.50 95
10.50 100
11.00 100
11.01 5
13.00 5

 

イオン化モード: Negative ESI

モード: Scheduled MRM

サンプルおよび標準試料の前処理

以下にサンプルおよび標準試料の前処理の手順を簡潔に説明します。すべての製品と溶媒について、使用前にPFAS汚染がないことを確認しました。

【サンプル】
乳製品のサンプルは近隣で調達したもので、以下の3種類:
 •    サンプル 1 低脂肪乳 (2%脂肪)
 •    サンプル 2 無脂肪乳
 •    サンプル 3 低脂肪乳 (1%脂肪)

◦ 各乳製品のサンプル10グラムを50 mLの遠心チューブ(cat.# 25846)に入れ、0.01または0.05 μg/kgの濃度で強化
◦ 同位体標識内部標準を0.1 μg/kgの濃度でサンプルに添加し、短時間ボルテックス混合
◦ 続いて、以下の試薬をサンプルに添加:
 •    アセトニトリル(10 mL)
 •    ギ酸(150 μL)
 •    Q-sep QuEChERS抽出塩パケット(cat.# 25847

これらを約30秒間ボルテックス混合し、サンプルを振とう台に移して10分間、振とう。その後、サンプルを4200 rpmで5分間遠心分離
◦ 上清を、900 mgのMgSO4、300 mgのPSA、150 mgのGCB(cat.# 26126)が含まれたQ-sep QuEChERS dSPE 15 mL遠心チューブに移し、約30秒間ボルテックス混合した後、再度4200 rpmで5分間遠心分離
◦ 上清のうち6mLを、清潔な15 mL遠心チューブに移し、ブローダウン蒸発器を用いて35℃で90分間乾燥
◦ サンプルをメタノール:水(60:40) (400 μL) の中で再溶解し、約30秒間ボルテックス混合し、4200 rpmで5分間遠心分離
◦ 上清をポリプロピレンバイアル(cat.# 23243)に移し、ポリエチレンスクリューキャップ(cat.# 23244)でキャップし、分析用に5 μLを注入

【標準試料】
◦ 校正用標準溶液はRestekのPFAS 28 calibration standard(cat.# 30734)を使用し、他のPFASには別の標準試料を使用
◦ 標準試料はポリプロピレンLCバイアルに分注され、濃度が0.03~50 ng/mL の範囲内になるようメタノール:水(60:40)で希釈
◦ 各検量線は分析対象成分の感度によって7~8段階の濃度レベルを含む
◦ 内部標準を1.5 ng/mLで校正用標準溶液に添加
◦ 定量用に同位体希釈液を用いて溶媒の校正を実施
◦ 各分析対象成分のMSトランジションと各分析対象成分に使用した同位体標識された内部標準はTable Iを参照

Table I: 分析対象成分のプレカーサイオン、プロダクトイオンとLC-MS/MSを使用した乳製品中のPFASの分析に使用された内部標準

化合物(PFAS) プレカーサ 1 プロダクト 1 プレカーサ 2 プロダクト 2 内部標準
PFBA 212.94 168.89 NA NA M4PFBA
PFPeA 262.93 218.89 NA NA M5PFPeA
PFHxA 313.10 119.03 313.10 268.88 M5PFHxA
PFHpA 363.16 169.06 363.16 319.09 M4PFHpA
PFOA 413.10 168.90 413.10 368.96 M8PFOA
PFNA 463.10 219.02 463.10 419.01 M9PFNA
PFDA 513.17 219.06 513.17 469.16 M6PFDA
PFUnDA 562.78 268.82 562.78 518.80 M7-PFUnDA
PFDoA 612.52 318.90 612.52 568.80 M2-PFDoA
PFTrDA 662.78 168.87 662.78 618.74 M2-PFTeDA
PFTeDA 712.78 168.87 712.78 668.74 M2-PFTeDA
PFBS 298.97 79.97 298.97 98.89 M3PFBS
PFPeS 349.10 79.98 349.10 98.98 M5PFHxA
PFHxS 398.80 79.82 398.80 98.82 M3PFHxS
PFHpS 448.78 79.82 448.78 98.82 M9PFNA
PFOS 498.78 79.89 498.78 98.82 M8PFOS
PFNS 548.65 79.89 548.65 98.82 M7-PFUnDA
PFDS 598.78 98.82 598.79 79.89 M2-PFDoA
PFUnDS 648.65 79.88 648.65 98.82 M2-PFDoA
PFTrDS 748.59 79.88 748.90 98.88 M2-PFTeDA
PFDoS 698.71 79.89 698.71 98.88 M2-PFTeDA
FOSA 497.75 77.87 497.75 477.76 M7-PFUnDA
ADONA 376.90 84.97 376.90 250.93 M4PFHpA
HFPO-Da 284.87 168.89 284.87 184.83 M5PFHxA
9Cl-PF3ONS 530.78 350.85 532.84 352.78 M7-PFUnDA
11Cl-PF3OUdS 630.71 450.81 632.71 452.81 M2-PFDoA
Capstone A 526.90 180.96 526.90 506.91 M9PFNA
Capstone B 568.81 548.85 568.81 548.90 M9PFNA

結果と考察

クロマトグラフィー性能

PFASに関して組織サンプルを分析する際に、胆汁酸は悩みの種です。タウロデオキシコール酸(TDCA)は肝臓で形成される内因性胆汁酸で、生物学的サンプル中に高濃度で検出されることがあります。TDCAは、タウルソデオキシコール酸(TUDCA)およびタウロシェノデオキシコール酸(TCDCA)とともに、すべてPFOSと同じMSトランジション(499 80)を有しており、PFOSの代謝物の一つであるFOSAと干渉する可能性もあります。したがって、胆汁酸をサンプルから除去するか、クロマトグラフィーで胆汁酸とPFOS(FOSA)とを分離することが必要です。目的の分析対象成分を除去することなく、胆汁酸をサンプルから選択して除去することは容易ではないため、乳製品サンプル中のPFASの分析にはクロマトグラフィーを使用しました。

メタノールとアセトニトリルのどちらを移動相の有機溶媒として使うのが良いのか、スカウティンググラジエントを使用してテストを行いました。最初にメタノールを移動相の有機溶媒として用いましたが、かなり複雑な分析メソッドの開発をしないと、胆汁酸の干渉を回避することは難しい、ということが分かりました。次に、アセトニトリルを用いて同様のテストを行った結果、TDCA、TUDCA、TCDCAの胆汁酸がすべてPFOSからきれいに分離されましたが、メタノールを使用した方が感度よく分離されたPFASがいくつかありました。そこで、メタノールとアセトニトリルを50:50で混合して使用したところ、感度よく、PFOSと胆汁酸とを分離できました。そのため、LC-MS/MSを用いた乳製品中PFAS分析にメソッドには、メタノールとアセトニトリルを50:50で混合した有機溶媒を移動相として採用しました。Figure 1をご参照ください。

Figure 1: (ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可) 

上部図:28種類のPFASと内部標準のクロマトグラム(PFOSとFOSAが胆汁酸の共溶出の影響を受ける可能性があるPFAS)

下部図:クロマトグラフィー条件を同じにしてTDCA、TUDCA、TCDCAの胆汁酸を分析したクロマトグラム

cgarm-img
LC_FF0630

 

直線性、精度、および再現性

乳製品中のPFAS分析用のLC-MS/MS分析メソッドでは、7~8段階の濃度レベルにおいて0.03/0.1~50 ng/mLの範囲でキャリブレーションを実施しました。直線性の評価を行うために、1/x重み付けを使用しました。すべてのPFASについて、R2値≥0.991であり、良好な直線性が示されました(Table III)。

3つの異なる乳製品サンプルに、目標LOQレベルの1倍と5倍(それぞれ0.01 µg/kgおよび0.05 µg/kg)となるように標準試料を添加しました。ブランクサンプルは各2本、乳製品サンプルは各3本ずつ調製し、それぞれn=3で分析を行いました。Table IIおよびTable IIIにおいて、アスタリスクが付いた成分はブランクサンプルでも検出されたため、その検出濃度を差し引いて添加サンプルの濃度を算出しました。EFSAが評価を行った4種類のPFASすべてについて、LOQスパイクレベルでの回収率は非常に高く、これらの回収率は0.01 µg/kgで101~112%であり、再現性は%RSD 3.81~16.6%と良好でした(Table II)。

Table II: EFSAが評価を行った4種類のPFASの0.01 µg/kgにおける回収率と%RSD

  平均回収率 (%RSD) n=9
  サンプル 1 サンプル 2 サンプル 3
PFOA* 108 (5.09) 102 (6.21) 105 (7.74)
PFNA 112 (7.97) 106 (8.19) 101 (16.6)
PFHxS 112 (5.93) 106 (7.25) 106 (12.8)
PFOS* 109 (7.25) 109 (3.81) 102 (6.72)

*ブランクサンプルに含まれていた濃度を差し引いた結果を添加サンプル濃度として使用

実験でモニタリングされた28種類のPFASのほとんどの回収率は、80~120%の範囲内(許容範囲)でした。一部の長鎖PFAS、つまり、炭素数8~13の炭素鎖を含むPFTrDA、PFTeDA、PFUnDS、PFTrDS、PFDoS、FOSA、Capstone Bの回収率は、サンプル1やサンプル3では低い一方、無脂肪乳であるサンプル2ではそのような傾向は見られませんでした。したがって、サンプル1やサンプル3に含まれる乳脂肪が一部の長鎖PFASの回収率を低くしている可能性があることが分かります。28種類のPFASすべてに関する検量線のダイナミックレンジ(検量線範囲)、R2値、回収率、%RSD値はTable IIIをご参照ください。

Table III: 乳製品中の直線性、精度、および再現性

化合物(PFAS) 検量線範囲 (ng/mL) 回収率 (Percent RSD) n=9
サンプル 1 サンプル 2 サンプル 3
Low High R2 0.01 µg/kg 0.05 µg/kg 0.01 µg/kg 0.05 µg/kg 0.01 µg/kg 0.05 µg/kg
PFBA* 0.1 50 0.996 90.1 (4.81) 105 (7.06) 103 (8.61) 116 (2.91) 115 (11.5) 116 (4.95)
PFPeA 0.1 50 0.996 105 (7.89) 110 (5.45) 102 (6.72) 111 (2.55) 107 (10.8) 114 (2.80)
PFHxA 0.1 50 0.996 114 (10.6) 113 (5.13) 104 (8.11) 112 (5.49) 118 (11.3) 113 (6.11)
PFHpA 0.03 50 0.997 117 (5.09) 112 (7.31) 108 (7.14) 115 (2.69) 111 (16.2) 118 (4.21)
PFOA* 0.1 50 0.995 108 (5.09) 109 (4.62) 102 (6.21) 113 (2.56) 105 (7.74) 113 (3.28)
PFNA 0.03 50 0.996 112 (7.97) 109 (2.63) 106 (8.19) 110 (3.81) 101 (16.6) 101 (10.4)
PFDA 0.03 50 0.997 111 (9.02) 113 (5.55) 107 (6.08) 112 (4.13) 112 (7.38) 115 (3.26)
PFUnDA 0.03 50 0.992 104 (7.52) 109 (11.6) 103 (10.9) 107 (7.57) 109 (8.90) 110 (4.54)
PFDoA 0.03 50 0.997 110 (7.57) 109 (4.34) 102 (6.72) 112 (2.76) 108 (9.77) 114 (2.45)
PFTrDA 0.03 50 0.999 75.9 (12.5) 65.8 (7.68) 86.7 (8.95) 73.3 (8.64) 71.8 (11.0) 68.8 (12.2)
PFTeDA 0.03 50 0.997 83.2 (14.5) 83.8 (12.4) 103 (6.91) 109 (8.95) 74.1 (17.2) 78.4 (11.3)
PFBS* 0.1 50 0.995 106 (11.9) 109 (11.4) 110 (11.2) 112 (5.21) 103 (7.18) 109 (5.32)
PFPeS 0.1 50 0.996 113 (6.32) 119 (5.78) 105 (6.19) 113 (4.87) 114 (8.03) 115 (5.08)
PFHxS 0.03 50 0.996 112 (5.93) 114 (5.29) 106 (7.25) 111 (3.59) 106 (12.8) 113 (3.92)
PFHpS 0.03 50 0.995 117 (5.14) 121 (9.15) 112 (5.57) 116 (3.81) 121 (5.04) 119 (5.32)
PFOS* 0.1 50 0.995 109 (7.25) 110 (7.21) 109 (3.81) 113(4.03) 102 (6.72) 107 (4.62)
PFNS 0.03 50 0.999 114 (17.1) 88.5 (18.1) 110 (11.5) 90.1 (15.4) 103 (15.5) 84.3 (19.9)
PFDS 0.03 50 0.997 92.6 (11.7) 95.8 (6.01) 101 (7.31) 100 (9.33) 99.2 (12.3) 102 (11.8)
PFUnDS 0.03 50 0.997 74.2 (9.48) 95.5 (9.11) 100 (9.94) 113 (9.25) 81.4 (20.7) 104 (12.7)
PFTrDS 0.03 50 0.994 67.9 (15.6) 46.2 (9.53) 88.1 (14.1) 95.5 (10.6) 43.2 (15.1) 55.5 (6.04)
PFDoS 0.03 50 0.997 55.6 (9.8) 59.6 (8.22) 96.3 (10.0) 103 (9.33) 62.1 (11.5) 73.9 (7.29)
FOSA 0.1 50 0.992 60.8 (12.6) 59.4 (10.2) 92.6 (8.16) 95.5 (9.41) 87.1 (15.3) 84.0 (12.5)
ADONA 0.03 50 0.996 111 (7.17) 109 (7.91) 93.8 (11.3) 98.9 (4.52) 93.8 (9.54) 104 (6.00)
HFPO-Da 0.1 50 0.996 106 (13.7) 110 (7.69) 111 (15.4) 114 (12.7) 125 (9.00) 124 (4.31)
9Cl-PF3ONS 0.03 50 0.992 94.5 (3.37) 99.3 (8.09) 96.6 (10.3) 98.9 (7.64) 102 (12.8) 106 (6.08)
11Cl-PF3OUdS 0.03 50 0.997 93.5 (6.74) 97.8 (6.78) 103 (12.2) 114 (10.0) 97.7 (11.2) 102 (13.1)
Capstone A 0.1 50 0.991 120 (12.1) 126 (9.27) 102 (16.5) 108 (7.34) 119 (6.44) 114 (5.06)
Capstone B 0.1 50 0.992 92.1 (11.6) 68.3 (10.9) 85.1 (15.2) 71.7 (8.24) 84.6 (15.3) 71.4 (10.6)

*ブランクサンプルに含まれていた濃度を差し引いた結果を添加サンプル濃度として使用

Figure 2はLC-MS/MSを使用した乳製品サンプル中の28種類のPFASすべての分析結果を示しています。0.01 µg/kgの場合、サンプル1では82%の分析対象成分が、サンプル2では100%、サンプル3では79%が、80~120%の範囲の回収率を達成しました。PFUnDSたった一つを除いて他のすべての分析対象成分の%RSD値は≤20%でした。

Figure 2: サンプル別の、乳製品中のPFASの分析において許容可能な精度と再現性の基準(0.01 µg/kgの場合)を満たした分析対象成分の割合

summary data chart for accuracy

summary data chart for precision

結論

このワークフローによって、乳製品中の28種類のPFASのLC-MS/MS分析メソッドは、明確でわかりやすい、信頼性が高いものとなりました。この分析メソッドを使えば、同じMSトランジションを持つ胆汁酸との干渉からターゲットの分析対象成分を効率よく分離できます。QuEChERS抽出とdSPEクリーンアップを使用した迅速でシンプルなサンプル前処理が可能なので、このワークフローはハイスループットの PFAS 分析ラボに最適です。EFSA が評価を行った4種類のPFAS に関する分析結果は良好で、その他の分析対象成分に関する分析結果も概ね許容範囲内でした。長鎖PFASのうちいくつかの回収率は低い値を示しましたが、これは乳製品サンプル中の脂肪の存在に関連している可能性があります。長鎖PFASの回収率は低かったものの、分析メソッドの再現性は許容範囲内でした。ここでご紹介した分析メソッドは、乳製品中のPFAS汚染を確実にモニタリングするために、ラボで簡単に実施することができる分析メソッドであると言えるでしょう。

参考文献

  1. Agency for Toxic Substances and Disease Registry. PFAS information for clinicians. Fact sheet. January 2024. https://www.atsdr.cdc.gov/pfas/docs/PFAS-info-for-clinicians-508.pdf 
  2. Food and Agricultural Organization of the United Nations. Gateway to diary production and products.  2024. https://www.fao.org/dairy-production-products/en 
  3. D. Schrenk, et al., Risk to human health related to the presence of perfluoroalkyl substances in food, EFSA J 18, (9) 2020. https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2020.6223 
  4. Maine Department of Agriculture, Conservation, & Forestry. PFAS response. 202. https://www.maine.gov/dacf/ag/pfas/pfas-response.shtml
  5. European Union Reference Laboratory for Halogenated Persistent Organic Pollutants in Feed and Food. Guidance document on analytical parameters for the determination of per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) in food and feed. Version 1.2. May 2022. https://eurl-pops.eu/news/guidance-document-pfas/guidance-document-pfas
FSAN4338-JP