新しいキャピラリーGCカラムの取付けとコンディショニング方法
キャピラリーGCカラムはガスクロマトグラフィー分析における重要な要素であり、その取付けとコンディショニングを適切に行うことが、正確で再現性のある分析結果を得るための鍵となります。しかし、新しく購入したキャピラリーカラムの取付けやコンディショニング方法に関して不安がある方も多いのではないでしょうか。本記事では、キャピラリーGCカラムの適切な取付け手順とコンディショニング方法を紹介します。詳細な情報は、本ウェブサイトの記事Restek Capillary Column Installation Guideもご参照ください。
カラムの取付け
Step 1: 取付け前の準備
新しいキャピラリーカラムをGC装置に取り付ける前に、以下の準備を行いましょう。
- GC装置内の加熱ゾーンを冷却
最初に、GCの加熱ゾーンを冷却し、古いカラムを取り外します。新しいカラムを取り付ける際に、システムに問題が発生することがありますので、古いカラムはまだ捨てずに保管しておきましょう。もし新しいカラムに問題が発生した場合、古いカラムを使用してトラブルシューティングを行うことができます。 - 古いカラムの処理
古いカラムの両端をキャピラリーカラムエンドキャップや、使用済みの注入口セプタムの破片でシールし、カラムを横に置いておきます。これで新しいカラムの取付け準備が整いました。
Step 2: 新しいカラムの取付け
新しいキャピラリーカラムの取付けを行います。以下の手順で慎重に進めましょう。
- 新しいカラムの取出し
新しいカラムを箱から取り出し、上部に付属しているエンドキャップまたはセプタムを外します。 - カラム端のカット
カラムの注入口側に(カラムのタグを読もうとするとカラムケージの前側にある端、または Integra-Guard リテンションギャップ/ガードカラム部がある側)、カラムが15~20cm(6~8 インチ)出るようにフィッティングとフェラルを通し、カラム端を約10cm(4インチ)カットします。カットする際にはセラミック製 スコアリングウェハ(または同様のツール)の滑らかな面を使用します。これは、フェラルの取付け中に破片がカラム内に入り込まないようにするためです。 - カラムの取付け
装置のマニュアルに従い、カラムを注入口に慎重に挿入し、フィッティングを締めます。この際、適切な流量が得られるようにキャリヤーガス*をオンにし、調整します(詳細はTable I参照)。 - カラム内のガス流れ確認
カラムの出口側をメタノールまたは固定相に適した溶媒に浸し、気泡の流れでカラム内にガスが流れていることを確認します。 - パージの実施
カラム出口を溶媒から取り出し、10〜40分間キャリヤーガスでパージします。ヘリウムまたは水素をキャリヤーガスとして使用する場合は、Table Iの推奨条件に従ってパージしてください。
*注意: 水素ガスは爆発性があるため、オーブン内に水素が充満しないようにし、水素がオーブン内に流入している間はカラムを加熱しないでください。水素をキャリヤーガスとして使用する場合は、必要なすべての安全予防措置を講じてください。
Table I: ヘリウムまたは水素*をキャリヤーガスとして使用し、キャピラリーGCカラムをパージする際の流量
カラム内径 (mm) | 最小流量(mL/min) | 最小パージ時間 (min) |
0.45 / 0.53
0.32 0.25 / 0.28 0.15 / 0.18 0.10 |
5.0
1.5 1.0 0.8 0.5 |
10
20 25 30 40
|
Step 3: パージ手順とリークチェック
パージとは、カラム内から酸素や水分を除去する作業です。これにより、カラムの固定相が高温で不可逆的な損傷を受けるのを防ぎます。パージ中には電子リークディテクタを使用して漏れをチェックし、システムが完全にリークフリーであることを確認します。また、キャリヤーガスは高品質な酸素トラップを通してからカラムに通すようにしましょう。パージ後、カラムのコンディショニングの準備は完了です。まだ、キャピラリーカラムを検出器に接続しないでください。
コンディショニングの重要性
カラムを適切にコンディショニングすることで、その性能を最大限に引き出し、長期的な安定性を確保することができます。コンディショニングの時間と温度は、カラムの固定相の化学的性質や厚さ、カラムの使用目的、使用する検出器のタイプなどにより異なります。以下に一般的なコンディショニング手順を示します。Table IIのカラムのコンディショニング時間は概算値です。安定したベースラインと予想される化合物ピークに対して十分なS/N比を達成するのに必要な時間だけ、カラムをコンディショニングするというのが重要です。ご不明な点がございましたら、Restekのテクニカルサービスまでお問い合わせください。新しいカラムに最適なコンディショニングの手順を決定するお手伝いを致します。
● コンディショニング手順
- オーブン温度の設定
GCオーブンの温度を40°Cに設定し、昇温速度を10°C/分にします。 - 最終温度の設定
分析で要求される最終温度よりも20℃高い温度、またはカラムの最大等温温度(いずれか低い方)にオーブンをプログラムします。 - 注入口の加熱
注入口を適切な温度に加熱し、オーブンプログラムを実行します。 - オーブン温度の保持
オーブン温度が設定温度に達したら、Table IIに記載された時間だけその温度を保持します。 - 冷却と検出器接続
キャリヤーガスを流しながらオーブンを冷却し、上記の手順でカラムの検出器側にフィッティングとフェラルを通し、その後カラムを検出器側に接続し、手順1~4を繰り返します。
● オーバーナイトコンディショニングの注意点
通常、カラムのコンディショニングは数時間で完了しますが、特定の分析にはオーバーナイトコンディショニングが必要な場合もあり、特に有効なのは以下の場合です。カラムを最高使用温度で長時間使用する場合(模擬蒸留分析など)、厚膜で高ブリードなカラムを非常に高感度の検出器(電子捕獲検出器や質量分析計など)に接続する場合、または安定したベースラインを得たい場合、などです。ただし、過度な加熱によりカラムの寿命が短くなることもあるのでオーバーナイトコンディショニングを慎重に行うことが重要です。詳細は装置のマニュアルを参照するようにしてください。
● リークチェックとデュアルカラム分析
リークはカラム接続に起因することが多いため、接続部は常にリークチェックを行い、確実にシステムを密封してください。もしデュアルカラム分析を行う場合は、それぞれのカラムを個別に取り付け、コンディショニングとテストを行う必要があります。両方のカラムの性能が問題ないことが証明された後に、MXT “Y”-Union, “Y” Press-Tightまたは同様のコネクタを使用して、ガードカラムに同じように接続します。
まとめ
キャピラリーGCカラムの取付けとコンディショニングは、結果の信頼性を確保するために非常に重要な工程です。適切なコンディショニング手順を確立したら、その情報を記録しておくことをお勧めします。その手順に従うことで、安定したベースラインと優れたピーク分離を得ることができます。上記の作業中にもし何か問題が発生した場合は、Restekのテクニカルサービスに相談し、専門的なサポートを受けることをお勧めします。
Table II: キャピラリーGCカラムのコンディショニング時間
以下のカラムの場合: MXT-1, MXT-1HT, MXT-1 SimDist, MXT-2887, MXT-500, MXT-Biodiesel TG Rtx-1, Rtx-5, Rtx-5MS, Rtx-5Amine, Rtx-440, Rtx-1614, Rtx-2887, Rtx-G27, Rtx-Biodiesel, Rtx-DHA (PONA), Rtx-Mineral Oil, Rtx-PCB, Rtx-TNT, Rtx-TNT2 Rxi-1ms, Rxi-5ms, Rxi-5Sil MS, Rxi-XLB, Rxi-17, Rxi-17Sil MS, Rxi-35Sil MS |
|||
カラム長 |
膜厚 (µm) |
おおよその時間 | |
(min) | (hr) | ||
<15 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
15 30 60 90 |
0.25 0.5 1 1.5 |
30 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
30 45 60 90 |
0.5 0.75 1 1.5 |
>60 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
60 90 120 150 |
1 1.5 2 2.5 |
以下のカラムの場合: MXT-20, MXT-35, MXT-50, MXT-65, MXT-65TG, MXT-200, MXT-502.2, MXT-624, MXT-1301, MXT-1701, MXT-Volatiles Rtx-20, Rtx-35, Rtx-35 Amine, Rtx-50, Rtx-65, Rtx-65TG, Rtx-200, Rtx-200MS, Rtx-502.2, Rtx-624, Rtx-1301, Rtx-1701, Rtx-BAC Plus 1, Rtx-BAC Plus 2, Rtx-CLPesticides, Rtx-CLPesticides2, Rtx-Dioxin, Rtx-Dioxin2, Rtx-G43, Rtx-OPPesticides, Rtx-OPPesticides2, Rtx-VMS, Rtx-Volatiles, Rtx-VRX Rxi-624Sil MS Stx-CLPesticides, Stx-CLPesticides2 |
|||
カラム長 |
膜厚 (µm) |
おおよその時間 | |
(min) | (hr) | ||
<15 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
20 40 60 80 |
0.3 0.7 1 1.3 |
30 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
40 60 80 100 |
0.7 1 1.3 1.7 |
>60 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
80 120 160 200 |
1.3 2 2.7 3.3 |
以下のカラムの場合: DEX chiral phases FAMEWAX MXT-WAX Rt-CW20M F&F, Rt-2560, Rt-TCEP Rtx-225, Rtx-2330, Rtx-WAX Stabilwax, Stabilwax-DA, Stabilwax-DB |
|||
カラム長 |
膜厚 (µm) |
おおよその時間 | |
(min) | (hr) | ||
<15 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
30 45 60 90 |
0.5 0.75 1 1.5 |
30 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
60 90 120 150 |
1 1.5 2 2.5 |
>60 | 0.1 - 0.25 0.5 - 1.0 1.0 - 1.5 1.5 - 3.0 |
80 120 160 200 |
1.3 2 2.7 3.3 |