Restek
Resource Hub / Technical Literature Library / LCメソッド変換 カラムサイズを変更すると、サンプル分析を高速化できるでしょうか

LCメソッド変換: カラムサイズを変更すると、サンプル分析を高速化できるでしょうか?

articleBanner

はじめに

メソッド変換により分析時間、溶媒、およびサンプルを節約することは、液体クロマトグラフィー(LC)メソッドを改善するためのきわめて一般的な方法です。LCメソッド変換では、同じ粒子タイプ(Raptorなど)と固定相(ビフェニルなど)を維持する必要がありますが、粒子径が小さく、短くて内径の細いカラムを使用すると、許容可能な結果を保ちながらも分析をスピードアップできる可能性が十分にあります。これにより、サンプルスループットの向上がもたらされ、定期的なメンテナンスに時間を割くことができるようになり、さらにより少量の移動相を用いる迅速なメソッドからもたらされる利点の恩恵を得ることができるようになるでしょう。

ただし、特に重要なペアの完全な分離が不可欠な場合には、カラムを変更するだけではうまくいきません。重要な分離を損なうことのないように、新しいカラムに合せて分析条件を変更する必要があります。そこで、役立つのがLCメソッドトランスレーションソフトウェアです。

短時間でほぼ同じ分離をおこなうという目標を達成するには、サイズは小さくとも同じ効率、つまりほぼ同等の理論段数を維持するカラムに変換する必要があります。 しかし、元のカラムと同じ段数(±10%)を有する新たなカラムサイズを見つけることが現実的もしくは可能であるとは限りません。 これは変換を成功させることができないという意味ではなく、現在の分離に何らかの変化があるということを意味します。 新しいカラムとメソッドは、より短時間で分析目標を達成するのに役立つ可能性があるため、メソッド変換ソフトウェアを使用して選択肢を検討する価値はあります。

RestekのPro EZLCメソッドトランスレータを使用して、メソッドを新しいカラムに切り替えることで、質の良い結果を得つつ時間を節約できるかどうかを判断するための方法を見ていきましょう。

LCメソッド変換のシナリオ

この例では、100mm×3.0mm、2.7μmのRaptor Biphenylカラムを用いるメソッドの開発にすでに成功していました。また、50mm x2.1mm、2.7μmのカラムが自社にあり、小さなサイズのカラムに移行すると、分析時間が短くなる可能性があることを知っているので、よりサイズの大きなカラムによる現行のメソッドが、より短く、より細いカラムにうまく変換できるかどうかを知りたいと考えています。

この特定のケースでは、より小さなカラムは、理論段数全体における大幅な損失を意味します。つまり、適切なメソッド変換では、短時間で同じ分離を期待することはできません。したがって、LCメソッド変換の結果として重要な分離能が失われないように注意する必要があります。 しかし、同じ分離が得られないにしても、許容可能なクロマトグラフィーの結果を得ることはできるのでしょうか。

新しいメソッド条件を計算し、新しい結果を予測することが、メソッドトランスレータのあるべき姿として設計されたものです。それでは、それがどのように機能するかを見てみましょう。

メソッド変換の例

特定の乱用薬物分析を例にとります。元の長いカラムがもたらすクロマトグラフィーパフォーマンスに満足していても、より小さなサイズのカラムに変換し、パフォーマンスを犠牲にすることなく分析時間を短縮することができるかどうか確認したいと思います。15種類の乱用薬物のうち、MS/MSで区別できないためクロマトグラフィー分離が必要な同重体が5組あります。オリジナルメソッドが分離できるため、変換されたメソッドも同様に機能するかどうかに特に関心がおかれます。 下の図1は、100mm×3.0mm、粒子径2.7μmのカラムによるオリジナルメソッドの結果を示しています。

図 1 : オリジナルのカラムサイズとメソッドを用いたクロマトグラム。

 

次のステップは、LCメソッドトランスレータに現在のカラムとメソッドに関する情報を入力し、新しいカラムサイズに最適なメソッドを提供できるようにすることです。このトランスレータを使用する場合、FPPからFPP(全多孔性粒子)またはSPPからSPP(表面多孔性粒子)など、同じ粒子タイプのカラム間で変換する必要があることに注意してください。図2は、元のカラムサイズ、注入量、デュエルボリューム、「カラム外容量」値、および移動相条件(このケースではグラジエント分析)が入力された状態を示しています。

デフォルトのデュエルボリュームとカラム外容量の値に特に注意してください。ご使用の機器の値ではない可能性がありますが、変換された実行条件下における重要なペアの分離度や化合物保持時間などの値を決定する際に、トランスレータはこれらの値を考慮に入れるため特に重要です。 特定の機器についてこれらの値がわからない場合は、機器のマニュアルでこれらの情報を調べるか、機器の製造元に問い合わせるか、またはこれらの値を経験的に決定する方法をお調べください。 これらの値の詳細は、トランスレータの用語集に記載されています。トランスレータの右上隅にある「?」ボタンをクリックするとアクセスできます。

図 2: LCメソッドトランスレータを用いた最初のステップ:現在のカラム、機器、メソッドの情報を入力。

graphical user interface, table

次のステップは、新しいカラムサイズを指定し、メソッドトランスレータにその仕事をさせることです。図3は、この例で検討した新しいカラムを入力した状態を示しています。 新しいカラム情報が入力されると、この例のように警告メッセージが表示される場合があります。 この警告は、新しいメソッド条件下でのクロマトグラフィー選択性の変化の可能性を警告するためのものです(この例では、後ほどこの警告が適用されるかどうかを判断します)。同様の選択性を実現するには、変換されたメソッドを元のメソッドで化合物が溶出する移動相条件に一致させることが重要です。 メソッドトランスレータは、元のメソッドと同じ移動相組成で化合物を溶出させる新しい移動相グラジエント条件を作成しようとしますが、新しいカラムサイズではそれができないことがあります。変換されたカラムの容量が元のカラムと大幅に異なる場合、カラム内で元の移動相組成が達成される前または後に化合物が溶出する可能性があります。このような場合、特に初期の溶出化合物は、異なるB%条件下で溶出する可能性があり、選択性に影響を及ぼすかもしれません。これについての詳細は、トランスレータの用語集を参照してください。また、この影響を可視化するための特別なチャートを含む、ダウンロード版のPro EZLCメソッドトランスレータもあります。

図 3 : 新しいカラムのサイズを入力。

table

ボリューム効果の活用

図4は、Pro EZLCメソッドトランスレータが計算した、新しく調整された注入量とメソッドの状態を示しています。 同じ機器で新しいメソッドを実行する場合、ほかの変更を加えずにデュエルボリュームとカラム外容量の値を同じに保ちます。 ただし、メソッドを別の機器に移したり、他の変更を行う場合は、新しい値を考慮する必要があります。

図 4: 元のメソッドの溶出プロファイルと一致するように、変換された注入量は新しいカラムのサイズと新しいメソッド条件に合せて調整されています。

graphical user interface, table

グラジエントとイソクラティックメソッドを変換することができ、変換された流量は編集可能なフィールドであることに注意してください。以下の「結果」セクションに示すように、変換された流量を変更して分析種の保持時間と分離にどのように影響するかを確認できます。

また、Pro EZLCメソッドトランスレータは、指定された一連のカラムサイズに対して理想的な範囲内にある流量のみを返そうとします。したがって、実際に計算により変換された流量がそれらの値を外れた場合、Pro EZLCメソッドトランスレータは、流量が新しいカラムに対して望ましい範囲内になるように調整します。 この機能の詳細については、用語集を参照してください。

結果の解釈

LCメソッドトランスレータのこのセクションでは、新しいカラムを用いる変換後のメソッドで予想される分析時間の短縮と背圧の変化を示します。また、ユーザー固有の注入回数で時間と溶媒の節約を計算することもできます。 この例では、新しいメソッドが半分の圧力、半分の分析時間、そして元のメソッドの1/4の溶媒消費量で結果を生成することがわかります。しかし、重要な化合物の間はまだ十分に分離しているでしょうか? 「重要なピークの分離度」と「化合物の保持時間」のフィールドでは、新しいカラムとメソッドが許容可能な結果を提供するかどうかを判断できます。

元のメソッドの結果を再確認すると、最小の分離度を有する重要な化合物ペアはモルヒネ(ピーク1)とヒドロモルホン(ピーク2)であり、元の分離度は4.88です。 この2つのピークはかなりよく分離されているので、元のカラムと新しいカラムとの間の全体的な効率の低下は分離を犠牲にしない可能性があると予測できますが、4.88という元の分離度を適切なフィールドに入力し、予測分離度を見るだけで確認することができます(図5)。 また、モルヒネの保持時間を入力して、新しい条件下で保持時間がどのように変化するかを把握できます。

図 5: 結果のセクションを利用して、新しいカラムと新しいメソッド条件下で重要な分離度と保持時間を確認します。

graphical user interface, application

全理論段数の低下によって予測されたように、この2つの重要なペアの間の分離度は低下していることがわかりますが、新しい分離度はベースライン分離に必要な値 (R = 1.5)をはるかに超えていることが予測されていることもわかります。 これに基づいて、変換された条件で新しいカラムを使用しても、一番早く近接して溶出する重要な化合物ペアが依然として分離されている場合、残りのクロマトグラフィー分離も問題ない可能性が高いと結論付けることができますが、理論をそのままにしてはいけません。

図6は、新しいカラムサイズおよび変換されたメソッド条件を使用して分析された同じ化合物セットの実験結果を示しています。

図 6: 新しいカラムと変換後のメソッド条件を用いて生成された実験結果。

 

新しいカラムとメソッドを使用した実際の分析では、モルヒネの保持時間は0.66分であり、LCメソッドトランスレータの予測保持時間よりもわずか0.01分長くなっています。 モルヒネとヒドロモルホンとの間の分離度は、R=3.07であると実験的に決定されました。予測分離度はR=2.80で、およそ10%の違いがありました。重要なペアの分離度に関しては、控えめな方向で誤りとなりました。したがって、予測よりもさらに優れた分離能を示す実験結果となり、この例では、重要なペアの分離を損うことを懸念せずに、元のカラムから移行して新しいカラムと変換されたメソッド条件を採用しても安全であることがわかります。

一方、重要なペアが元の条件下でR=2の分離度を有していた場合、この特定の変換(100mm×3.0mm、2.7μmから50mm×2.1mm、2.7μm)は、変換条件下では共溶出を回避するのに十分な分離度を有していない可能性が高いでしょう(メソッドトランスレータは、これらの条件下でR=1.15を予測します)。

まとめ

ラボがメソッドをあるカラムから別のカラムに変換することに関心を持つ理由はたくさんあります。RestekのPro EZLCメソッドトランスレータのような無料のオンラインLCメソッド変換ツールを使用すると、数時間や数日ではなく、数分でその選択肢を調べることができます。多くの場合、LCメソッド変換は、ここに示した例のように、時間、サンプル、もしくは溶媒を節約しようとするラボを扱ったものですが、他の場合にも有用です。最先端のUHPLC機器で開発されてうまくいったメソッドを、従来のHPLC機器を備えた製造施設用に変換する必要がある場合、メソッドトランスレータは、オリジナルよりも大きなサイズのカラムを使用して同じ結果が達成できるかを確認するのに役立ちます。

そしてこの例では、ラボは自信を持ってメソッド変換をおこない、分析時間を半分に短縮し、半分の背圧で操作し(これは装置を扱いやすくします)、従来消費していた量の1/4の溶媒しか使用せずに、感度も同様に向上する可能性があります。 とてもよい取り組みだと思います。

あなたのラボにはメソッド変換の需要はありますか? その場合は、Restek Pro EZLCメソッドトランスレータをご確認ください。ご不明な点がありましたらお問い合わせください。 メソッド変換がうまくいきますように!

GNAR3316-JP