Restek
Home / Resource Hub / Technical Literature Library / Stabilwax-MS 熱安定性のある高極性GCカラム

Stabilwax-MS  熱安定性のある高極性GCカラム

フレーバー、食品、フレグランス、工業薬品、溶媒分析に最適

articleBanner
  • 高極性で安定したポリエチレングリコール(PEG)固定相を採用
  • 低ブリード、繰り返しの温度サイクルに対する高耐久性、かつ安定した保持時間を確保
  • 食品、フレーバー、フレグランス、工業薬品、溶媒分析に最適

【目次】

  1. Stabilwax-MS カラム
  2. GCによる極性化合物分析の課題
  3. Stabilwax-MSカラム:GC-MSに適したワックス固定相
  4. フレグランスの分析(市販の香水2種)
  5. フレーバーおよび食品の分析(スペアミントオイルとアルコール飲料)
  6. 工業薬品の分析
  7. 洗浄溶媒の分析

Stabilwax-MS カラム

Stabilwax-MS の特徴 お客様のメリット
熱安定性の高いポリエチレングリコール(PEG)固定相  MS検出器とのカップリングが可能:適用温度範囲 40 °C~260 °C
VF-WAXmsより低いブリード 検出限界値がより低くなる
超クリーンなRestek製の固定相と様々な架橋結合技術 非常に高い不活性度と化学薬品や高温に対する安定性
固定相の損失や劣化なしで、繰り返しの水注入に耐性あり カラム寿命が長く、溶媒洗浄が可能
USP G14、G15、G16、G20、G39相と同等 食品、フレーバー、フレグランス、工業薬品、溶媒中の極性化合物に最適

→ 目次に戻る

GCによる極性化合物分析の課題

ガスクロマトグラフィで最も広く使用されているカラムの1つは、ポリエチレングリコール(PEG)または「ワックス」固定相です。このユニークなカラムは、ポリエチレングリコール骨格を持つため、Rxi-1カラム(100%ジメチルポリシロキサン)やRxi-5カラム(5%ジフェニル/95%ジメチルポリシロキサン)のような非極性メチル固定相に比べて極性が高くなります(Figure 1)。ポリエチレングリコール骨格に酸素基を組み込むことで、極性分析対象成分に対して高い選択性を持つ固定相が形成されます。極性分析対象成分にはアルコール、グリコール、エステル、エーテルなどがありますが、これらの化合物クラスは、医薬品原料、アルコール飲料、工業薬品、フレーバー、フレグランスなどによく含まれており、ワックス固定相での分離が可能です(無極性カラムや中間極性カラムでは分離できません)。

固定相の構造上、ワックスカラムは一般的に無極性カラムよりも最高使用温度が低く(240~250℃)(例:Rxi-5msカラムの最高使用温度は360℃)、シリコーン固定相よりもカラムブリードレベルが高くなります。このため、一部のワックスカラムではGCオーブン温度サイクル中に生じる固定相の損失(カラムブリード)により保持時間が安定しないことがあります。また、ワックス固定相は酸素の影響を受けやすく、高温のGC内でリークした酸素にさらされると、急速に劣化する可能性があります。酸素の混入はクロマトグラフィー上で高いカラムベースラインとして現れ、これはカラムのコンディショニングやメンテナンスでは減少させることができません。リークのないシステムでカラムを長持ちさせるためには、Restekのリークディテクタをぜひご使用下さい。この製品の詳細については12ページを参照し、リークディテクタの正しい使用方法については、Restekのウェブサイトのリークチェックデモをご覧ください。

Figure 1: Stabilwax-MSカラムは極性が高いため、食品、フレーバー、フレグランス、医薬品原料、工業薬品に含まれる極性化合物の分離に最適です。

Chemical structure for Stabilwax

 

ここ数年、ベンチトップ型の質量分析計(MS)検出器は、高感度で、定量的な保持時間データの測定および化合物の同定が可能なため、GC検出器として選ばれるようになりました。多くのワックスカラムで見られるカラムブリードの心配をすることなく、MSシステムで独自の選択性を活用するために、GC-MSユーザーが長い間探し求めていたのは、熱安定性のある極性固定相でした。

→ 目次に戻る

Stabilwax-MSカラム: GC-MSに適したワックス固定相

RestekのStabilwax-MSカラムこそが、GC-MSユーザーが探し求めていたものです。極性不活性化表面によって、ポリエチレングリコールポリマーがフューズドシリカチューブに強固に結合しているので、高い最高使用温度(260 °C)が実現しました。これにより、カラムを高温に保つことができるため、高分子化合物の溶出が速くなります。さらに、最大許容ブリードレベル(内径0.25 mmのカラムでは4.0 pA、内径0.32 mmのカラムでは5.0 pA最)を規定した厳格な品質試験により、低いブリードレベルを保証しています。質量分析計で実際のブリードレベルを比較すると、Stabilwax-MSカラムはVF-WAXmsカラムより低い値を示しています(Figure 2)。VF-WAXmsカラムの限界温度250 °Cでテストした場合、Stabilwax-MSカラムではブリードが低くなっています。

ブリードレベルが低いStabilwax-MS カラムは、FAME、フレーバー化合物、エッセンシャルオイル、溶剤、芳香族(キシレン異性体を含む)、アクロレイン/アクリロニトリル、含酸素化合物など、幅広い極性化合物およびマトリックスの GC-MS 分析に適しています。Stabilwax-MSカラムは、化学物質の純度検査や、水やアルコール飲料中の不純物の分析にも役立ちます。微量分析が必要なメソッドで有用な分析結果を得たい場合、従来のワックスカラムではなく、極性が高く低ブリードのStabilwax-MSカラムを選ぶべきでしょう。このパンフレットでアプリケーションを確認し、低ブリードStabilwax-MSカラムを実際にお試しください!

Figure 2: Stabilwax-MS カラムのブリードレベルは VF-WAXms カラムよりも低く、260 °Cまで安定して使用できます(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_GN1165

→ 目次に戻る

フレグランスの分析

市販の香水

パーソナルケア製品や香水などのフレグランスを含む材料は、それら自体が複雑な混合物であるため、 GC-MS での分析が難しい場合があります。製造業者がこのような混合物を分析するのは、品質管理や安定性の確認のためだけでなく、調合の際にも必要だからです。このような混合物には、さまざまな化合物がさまざまな濃度で含まれているため、これらを分析する固定相には、幅広い分析対象成分に対して良好な選択性と優れた分離度を示し、不活性度が高く、低濃度分析に対して低ブリードを実現することが求められます。Stabilwax-MS カラムは、Figure 3の GC-MS で分析した市販の香水サンプル中のアルコール、グリコール、およびテルペンを明確に分離します。

Figure 3: 市販の香水中のフレグランスアレルゲンと一般的な化合物をStabilwax-MS カラムで分離しました(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

市販の香水 A

cgarm-img
GC_GN1161

 

市販の香水 B

cgarm-img
GC_GN1162

→ 目次に戻る

フレーバーおよび食品の分析

スペアミントオイル

フレーバーや食品のサンプルには多くの芳香族化合物が含まれています。それら化合物は原料にもともと入っていたものもあれば、処理中に生成されるものもあります。GC-MSは、エステル、脂肪酸、アルコール、アルデヒド、テルペンなどの化合物の分析に広く使用されています。また、GC-MSは、人体に有害である可能性があるがゆえにその多くが政府機関によって管理される、腐敗や不純物による汚染物質の検出や測定にも使用されます。

スペアミントオイルは、食品やパーソナルケアアイテムなど、様々な市販製品に使用されています。スペアミントオイルを含む製品を製造している企業は、スペアミントオイルの品質管理をするために、一般的にはカルボンに関する検査を行います。カルボンがミントの香りのメインの有効成分だからです。多くの場合、メントールもまたターゲット化合物となりますが、それはメントール(スペアミントオイルの成分として僅かしか含まれない成分)が混ぜ物としてよく添加されるからです。Figure 4は、スペアミントオイルサンプルを分析した結果ですが、メントールが大きなピークを形成しているのが分かります。このことは、このサンプルがメントールを添加したスペアミントオイルであるか、異なるタイプのオイル(例えば、不当表示されたペパーミントオイルなど)である、ということを示しています。Stabilwax-MSカラムは、GC-MSで250 °Cでのカラムブリードを最小限に抑えながら、この複雑な性質のサンプルを明確に分離するために必要な選択性を備えています。

Figure 4: 市販のスペアミントオイルをStabilwax-MSカラムで分析しました。メントールのピークは18で示されています。(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_GN1169


アルコール飲料

アルコール飲料には、アルコールや短鎖アルデヒドなど、さまざまな揮発性化合物が含まれており、メーカーは品質管理、真正性、ブランド識別の目的で分析しています。ガスクロマトグラフィーは、キャピラリーカラムが効率的な分離を提供するため、これらの化合物を特定するために使用できます。キャピラリーGCは、フーゼルアルコール(イソアミルアルコール、4-テルペニオール、リナロール、ゲラニオールなど)のような構造的に類似した化合物の分析に特に有用です。Stabilwax-MS固定相は独特な極性を持つため、Figure 5に示したジンのサンプルの分析のように、さまざまなアルコールおよびフーゼルアルコール(またはフーゼル油)を確実に、高い精度で分離します。Stabilwax-MSカラムで実現される低いブリードレベルは、ジンの揮発性物質の優れたレスポンスと定量を可能にし、正確な銘柄同定に役立ちます。

Figure 5: Stabilwax-MS カラムを使用してジンの銘柄を比較しました。ジン1は3で示されるD-Limonene、ジン2は7で示されるLinaloolが高いピークを示しています。(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_FF1237

→ 目次に戻る

工業薬品の分析

工業薬品や溶剤は、ドライクリーニング剤、ペイントシンナー、シミ抜き剤、香水、インク、接着剤、その他何百もの材料に使用されています。また、その多くは、ポリマー、ファインケミカル、セルロイドセメント、ラッカー(木材のステインや印刷用途など)の製造や、コーティング剤、医薬品、塗料、包装材の製造にも使用されています。これらの化学物質や溶剤の分析は、受入純度のモニタリング、プロセス管理、廃棄(ドラム缶廃棄物)のために行われます。Figure 6に分析結果が示された化合物の多くは、包装サンプルや産業衛生サンプルに含まれています。Figure 7 が示しているのは、プロセス管理と純度モニタリング用のサンプルで一般的に確認される化学物質と溶剤の明確な分離です。Stabilwax-MS カラムの熱安定性がもたらしたのは、昇温分析における幅広い化合物の分析時間の短縮と、GC-MS による 250 °C での低いカラムブリードです。

Figure 6: Stabilwax-MSカラムでのアルコールおよびアセテートの優れた分離度と不活性度(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_FF1224

 

Figure 7: Stabilwax-MSカラムでの一般的な工業薬品および溶剤のGC-MSによる12分以内の分析(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_GN1163

→ 目次に戻る

洗浄溶媒の分析

洗浄溶媒は、主に有機物を溶解するために使用されます。残留物を残さずに洗浄するため、ガラスクリーナーなどの製品に非常に有用です。洗浄溶媒は他の水溶性成分を溶解して溶液にする必要があるため、水との混和性が最も重要な選択基準となります。そのため、アルコールとグリコールがよく使われます。グリコールエーテルはエチレンとプロピレンから作られ、優れた脱脂剤、洗浄剤、中間体であることが証明されています。一般的に使用されるグリコールエーテルは30種類以上あり、その技術的特性や毒性プロファイルはさまざまです。例えば、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(EGEEA)は、欧州連合(EU)によって生殖毒性物質として特定されており、フランスでは製造も使用もされていません。実際、多くのヨーロッパ諸国ではグリコールエーテルの使用が規制されているか、廃止されています。Stabilwax-MSカラムは、洗浄溶媒に含まれるアルコールとグリコールエーテルに対する優れた選択性と不活性度があり、熱安定性が高いという利点もあります。Figure 8は、220 °Cまで5分間の高速昇温分析でベースライン分離が達成されることを示しています。Stabilwax-MSカラムの熱安定性により、250 °Cへの焼きだしが可能になり、洗浄溶媒中の高分子量の汚染物質を除去できるため、カラムの寿命を延ばし、カラムのメンテナンスを減らすことができます。

Figure 8: Stabilwax-MSカラムで分析された洗浄溶媒(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)

cgarm-img
GC_GN1164
GNSS1818A-JP