LCカラムの粒子径選択がカラム性能に及ぼす影響:2.7 µm vs 5 µm 表面多孔性充塡剤(SPP)
表面多孔性充塡剤(一般的にSPPまたはコアシェル粒子と呼ばれる)は、高速かつ効率的なLC分離を提供できることが証明されています。これらの粒子は薄いシリカの多孔質層に包まれた透過性のないコアを特徴としており、全多孔性充填剤よりもはるかに高い効率と感度が得られます。このRestekのRaptor SPP LCカラムは、1.8µm、2.7 µm、5 µm 粒子径で利用可能であり、分析者は特定の測定に最適なサイズを、柔軟に選択することができます。ただし、最適なLC粒子径の選択に必ずしも明確な基準があるとは限りません。このテクニカルノートでは、2.7 µmと5 µm粒子径におけるRaptor LCカラムの効率・感度、および圧力の違いを検討し、目的の実験条件と分析装置の性能に基づいて適切な粒子径を選択するためのアドバイスを提供します。
効率について
カラム効率と線速度または流量の関係は、van Deemterプロットから説明することができます。カラム効率は理論段高さ(H)で表され、与えられた流量での理論段高さが小さいほど、カラムの効率が高くなります。その結果、ピークがよりシャープになり、分離度が向上します。Figure 1に示すように、Raptor 2.7 µmカラムは全ての流量においてRaptor 5 µm カラムよりも平均して25%以上高い効率を示しました。さらに、Raptor 2.7 µmカラムでは、より高い流量で効率の損失が最小限に抑えられました。直径4.6 mmのカラムの場合、2.7 µm粒子径のカラムは1.0~1.6 mL/minの流量がもっとも高い効率をもたらしました。一方で5 µm粒子径のカラムでは、流量範囲が 0.4 ~ 1.0 mL/min の場合にもっとも髙い効率が得られました。
感度について
感度は特定ピークのシグナルとノイズの比(S/N)から測定できます。レスポンスはピーク幅を狭くすることで向上させることができるため、ピークをよりシャープにすることで、感度が向上することができます。表面多孔性充塡剤は非多孔質の透過性がないコアをもつため全多孔性充填剤と比べ多孔質部分が少なく、短い拡散距離となるため、結果としてピーク拡散が減少し、ピークがシャープになります。粒子径の選択が S/N に及ぼす影響を実証するために、一般的な医薬品とその代謝物を、2.7 µm と 5 µm 粒子を充填した Raptor Biphenyl カラムで分析しました。その結果得られたクロマトグラム、ピーク幅、およびS/NをFigure 2で比較しました。Raptor 2.7 µm粒子径カラムはRaptor 5 µm粒子径カラムと比較し平均してS/Nが32%増加し、平均ピーク幅が25%減少しました。
圧力について
SPPの主な利点の1つは、全多孔性充填剤と比較した場合、多くの場合で背圧が同等か、さらには低い背圧でカラム効率が向上することです。粒子径を小さくすることで効率が向上し、圧力は粒子サイズの二乗に反比例して増加します。Figure 3では、5µm から 2.7 µm の粒子に切り替えると、カラム背圧が流量 (0.4 ~ 2 mL/min) で平均約 150% 増加することが示されました。圧力に影響するその他のパラメーターには、カラムサイズ、移動相組成、LC および検出システムの流量制限などがあります。
本検証の結論
Raptor 2.7 µmと5 µm粒子径のSPP LCカラムを選択する際には、装置および分析目的を考慮することが重要です。
Raptor 5 µmカラム:
Raptor 5 µm粒子径カラムは、低い背圧、優れた効率および感度を示します。このカラムを既存のメソッドに置き換えることで、特に圧力制限のある 従来のLC システムの分析時間を短縮させることができます。Raptor 5 µm SPP は、分析対象数の少ない高速アッセイに最適な粒子径です。
• 大きいシステムボリューム
• 装置耐圧400 bar
• 少ない分析対象数であればピークキャパシティが少なくてすみます。
Raptor 2.7 µmカラム:
Raptor 2.7 µm粒子径カラムは、より高い圧力と引き換えに5 µm SPPよりも高い効率と感度を示します。小さいカラムサイズの効率はカラム外容積が最も顕著に影響するため、2.7 µmカラムは600 barまで耐圧があるシステムボリュームが小さいシステムに適しています。Raptor 2.7 µm SPPは、ピークキャパシティを必要とする多成分分析に最適な選択肢となります。
• 最小のシステムボリューム
• システム耐圧600 bar
• より多くのピークキャパシティを必要とする多成分分析