[6] クロマトグラムからわかること ピーク形状: 全てのピークがテーリング
16 May 2013
クロマトグラムは指紋のようなものです。クロマトグラムを”読む”ことができれば、その原因を推測することができます。このシリーズでは、ユーザーの皆様からいただいたGCのクロマトグラムを示し、そこに現れている現象の潜在的な原因について説明しましょう。そして解決策を考えてみましょう。
図1. 15回の注入後、全てのピークにテーリングが見られます。
図1に示したようなクロマトグラムになってしまいました。最初は上の段のように問題のなかったクロマトグラムが、15回注入後、下の段のようになってしまいました。ピークはテーリングし、それに伴いピーク高さも低くなっています。重要な点は、全てのピークがテーリングしていることです。原因はいくつか考えられます。
注入口の汚染:
通常15回注入ではこのようなピークにはならないので、ライナーとセプタムを確認してみましょう。
非常に強いサンプルマトリックスの影響:
ライナーが急激に汚染されてしまいました。ウール入りのライナーを使用し、LODが維持できる最小限の量を注入してみましょう。さらなるサンプルクリーンアップの検討、もしくは「バックフラッシュ」ができる注入口も検討してみましょう。
注入口の温度が低すぎる:
気化が十分でないです。温度計を使用して、実際の温度を確認してみましょう。GCの表示値が常に正しいとは限りません。
システムのデッドボリューム;
カラムの、注入口に挿入されている部分、もしくは検出器に挿入されている部分が折れている可能性もあります。検出器は高い活性点がある場合もあります。こちらのブログもご参照ください 。
FID検出ポートの怪:過小評価すると大きな問題となります!侮ることなかれ!
システムの活性点 1:
前述のように検出器にも生じ得ることですが、使用履歴のあるキャピラリーカラムの注入口側で生じることも多々あります。固定相/表層が活性化され、吸着点となります。このようなカラムの劣化は、サンプルマトリックスによって引き起こされます。一定程度分析したらカラムの注入口側をカットするか、もしくは「ガードカラム」として「プレカラム」を使ってください。15回注入しただけで生じるのであれば、マトリックスに対してより耐性のあるカラムの使用も検討してみてください。 Rxi-XLBは 、ポリマー骨格が非常に安定しているため、サンプルストレスへの耐性に優れた次世代タイプの液相です。最後に、膜厚を2倍にすることで、溶出温度は高くなりますが、ピーク形状はよくなるかもしれません。
システムの活性点 2:
水や酸素がシステム内に入った場合、温度が高いとしばしばカラムの注入口側が活性化されます。これは温度に依存します。ガスボンベの交換や接続部でのリーク、またはセプタムから、空気はシステム内に侵入することが考えられます。リークチェックは大切です。 リークディテクタを使ってセプタムでのリークの確認をすることもできます。リークディテクタの詳細はこちらから:
ガスの純度を確保するためにも、GC本体の近くにガスフィルターの取付けを検討してください。こちらのブログもご参照下さい。