Restek
Home / Resource Hub / ChromaBLOGraphy / ピーク割れの原因と解決法:LCのトラブルシューティング

ピーク割れの原因と解決法:LCのトラブルシューティング 

7 Oct 2024
  1. ピーク割れの主な原因とは?
    • カラムの劣化によるピーク割れ 
    • デッドボリュームの影響 
  2. トラブルシューティングのステップ1:最初に確認すること
    • サンプル溶解液と移動相の確認 
    • マトリックス中夾雑成分の共溶出の確認
    • オーバーロードの可能性
  3. トラブルシューティングのステップ2:対策方法の具体例
    • 移動相のpHと成分のpKaを確認 
    • サンプルの溶解性の確認
  4. まとめ

1. ピーク割れの主な原因とは?

クロマトグラムでピーク割れが発生する原因はさまざまですが、カラムの劣化やサンプル溶媒の不一致がよく見られる要因です。まず、ピーク割れの状況として、すべてのピークが割れているのか、それとも特定のピークのみが影響を受けているのかを確認しましょう。すべてのピークが割れている場合は、カラム劣化や装置に問題が発生している可能性もあります。それを踏まえてトラブルシューティングを進めていきましょう。 

◦ カラムの劣化によるピーク割れ   

カラムの寿命が原因となることも多く、充填剤の劣化や汚染がピークの分裂を引き起こす可能性があります。特にカラム内部に空隙がある場合は、特定のピークというよりは複数のピークに影響を与えます。また、カラムに詰まりがある場合もピークの形状に影響を与えることがありますが、この場合は通常時と比較してカラム使用時の圧力が高くなります。これを防ぐためには、定期的なカラムの洗浄や交換が推奨されます。洗浄後も改善しない場合は、カラム自体の寿命である可能性が高いため、交換を検討してください。 

◦ デッドボリュームの影響                                 

接続部分でのデッドボリュームもピーク分裂の原因になります。特にインジェクタからカラム、そして検出器への配管の途中でデッドボリュームが発生するとその影響が大きくなる傾向にあります。例えば、接続部分がしっかりと締まっていない、またはフェラルと配管の挿入が不完全などといった接続不良によってピーク割れは発生することがあるため、新しい配管を使用する際や、配管類の再接続を行う際には、すべての接続が正確に行われているかを確認してください。カラムエンドの規格(パーカー型/ウォーターズ型)や接続部位のポートに適した接続(配管とフェラルの調整)を心がけることも重要です。配管とフェラルの調整が面倒な場合は、繰り返し調整可能なEXP2フィッティングなどのご利用もご検討ください。 

→ 本文の先頭に戻る

2. トラブルシューティングのステップ1:最初に確認すること

◦ サンプル溶解液と移動相の確認                       

特定のピーク(溶出の早いピーク)にのみ割れが生じている場合、サンプル溶解液が原因となっている可能性があります。サンプル溶解液が移動相と一致していない場合、強溶媒効果によってピークが分裂することがあります。サンプル溶解液が原因である場合、移動相の初期条件と同じ組成の溶媒や、移動相の弱溶媒でサンプルを溶解することで、ピーク割れの改善が期待できます。もし、サンプル溶解液に関して上記の調整が難しい場合は、注入量を減らすことも検討してみてください。 以下、サンプル溶解液がクロマトグラムのピーク形状に影響を与えた例をFigure 1Figure 2に示します。

Figure 1: サンプル溶解液としてメタノールを使用した2アシルカルニチンの分析条件とクロマトグラム

blog-are split-LC-peaks-giving-you-a-splitting-headache-01.png

Figure 2: 移動相Aをサンプル溶解液として用いた2アシルカルニチンの分析条件とクロマトグラム

blog-are split-LC-peaks-giving-you-a-splitting-headache-02.png

◦ マトリックス中夾雑成分の共溶出の確認                   

マトリックス中に夾雑成分が含まれており、これが分析対象成分と共溶出することが、ピーク割れの原因となることもあります。この場合、すべてのピークというよりは、特定のピークにのみ分裂が生じることが多いと言えます。夾雑成分の共溶出が原因となっているかどうかは、ブランクマトリックスサンプルを注入することで確認できます。取得したクロマトグラムに共溶出する成分がないか確認してください。ブランクマトリックスサンプルでもピーク割れが観察されたら、次に考慮すべきはオーバーロードです。 

◦ オーバーロードの可能性                                           

サンプル濃度が高い、または注入量が多い場合にもピーク割れが発生します。この場合は、サンプル注入量を減らすことで改善することが多いです。これを行っても問題が解決しない場合は、他の要因(例えば移動相やカラムの状態)を再確認する必要があります。 

→ 本文の先頭に戻る

3. トラブルシューティングのステップ2:対策方法の具体例

ステップ1の対応を行っても改善されない場合は、次の対策が有効になることがあります。 

◦ 移動相のpHと成分のpKaを確認                   

移動相のpHが分析対象成分のpKaに近い場合、ピーク割れの原因になることがあります。移動相のpHを対象成分のpKaから+/-2程度調整することで、イオン化状態が安定し、ピーク分裂が改善されることがあります。

◦ サンプルの溶解性を確認                               

サンプルが移動相や溶解液に完全に溶解していない場合、ピーク形状が不安定になることがあります。サンプルが正しく溶解しているかを確認し、溶解性を改善するために溶解液を変更することを検討しましょう。

それでも解決できないときは、カラムの劣化や流路内のデッドボリュームの可能性について検討してください。カラム交換や配管類の再接続を行ってもトラブルが改善されない場合は、カラムメーカーや装置メーカーにお問合せすることをお勧めします。 

→ 本文の先頭に戻る

4. まとめ

これらのトラブルシューティングを通じて、ピーク割れの根本的な原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。カラムの定期的なメンテナンスや、サンプル溶解液を見直すことで、クロマトグラムのトラブルを防ぎ、分析の精度を高めることができます。 

さらに、RestekのThomson SINGLE StEP標準フィルターバイアルなどを使用し、カラムに不純物が入らないようにすることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。これらの対策を活用し、より精密な分析結果を得るための参考にしてください。 

→ 本文の先頭に戻る