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GCカラム選択の最適解【第1回】沸点から始める最適なカラム選び

8 May 2025

ガスクロマトグラフィー(GC)におけるカラム選択は、分離性能や検出感度に直結するため、分析化学者にとって重要なプロセスです。Restekのカタログだけでも数千種類のカラムが存在し、さらにカスタム品まで選べるという状況で、使用すべきカラムが明記されていない分析メソッドの場合、どのようにして最適なカラムを選択すればよいのでしょうか?

そこで、GCカラム選択の基本的な考え方を専門家の視点から体系的に4回に分けて、初心者にも分かりやすく解説します。第1回から第4回の各回で扱うトピックは1~2つで、そのトピックに関する概論となっています。特定の分析、アプリケーションに特化したカラム、推奨カラムのリストがある特定のメソッドに関しては詳説していません。また各トピックは、既存のメソッドがない(つまりメソッド開発段階である)という前提で記載しました。

特定の分析用に最適なカラムをどのように選択すべきか。カラムの選択肢を絞り込むための4つの選択基準と4つのカラムカテゴリで見ていきます。

4つのGCカラム選択基準:

1. 分析対象化合物の沸点(第1回)

2. 分析対象化合物の極性(および該当する場合はサンプル/標準溶媒の極性)(第2回)

3. 分析対象化合物の濃度、カラム容量、検出器の種類(第3回)

4. その他、選択肢をさらに絞り込むための詳細情報(第4回)

使用すべきカラムの選択肢を上記の基準によって、以下のような4つのGCカラムカテゴリに分類します。

4つのGCカラムカテゴリ:

A. ガス分析用カラム(固定相/吸着型)

B. 揮発性化合物用カラム(液相/分配型(β値* 約50未満))

C. 半揮発性化合物用カラム(液相/分配型(β値* 約50超))

D. 高温用カラム(液相/高温対応フューズドシリカ・金属(MXT)ポリシロキサン系)

*β値=相比(r/2df):r=カラムの内径、df=液相の膜厚

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カラム選択の第一歩は、沸点

GC分析の本質は「化合物の揮発性」にあります。すなわち、分析対象化合物やサンプル中の全成分の沸点を把握することが、カラム選択の出発点です。

カラム選択の目安として活用するのは公表値の沸点(bp)です。なぜなら、ほとんどの化合物に関してこの公表値を得ることが可能だからです。しかし、ご留意いただきたいのは、GCシステム内における実際の沸点は公表値(通常SDSに記載されている)の沸点よりも低くなる、ということです。この原因は、閉鎖状態の不活性な環境で、かつ流体の流れが複雑なシステムでは、化合物が大気圧(公表値の沸点を決定する際に使用)よりも低い温度で沸騰するためだと考えられています。

分析対象化合物の沸点とカラム選択の関係は下記の通りです。

沸点範囲  (bp) 推奨カラム
約50°C未満 ガス分析用カラム(固定相/吸着型)
約50°C~220°C 揮発性化合物用カラム(液相/分配型)
約100°C~450°C 半揮発性化合物用カラム(液相/分配型)
約400°C超 高温用カラム(液相/分配型)

※沸点範囲が重複しているところもありますが、カラムを含めてシステム内で化合物の凝縮が発生しないように温度を十分に高くしていれば、分析の精度は保たれます。つまり、すべての化合物が溶出するように、最高使用温度が高いカラムを選択しなければなりません。例えば、揮発性化合物と半揮発性化合物を一度に分析しなければならない場合、半揮発性化合物用のカラムを使用すべきです。

沸点だけでカラムの選択肢を絞り込める場合もありますが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。重要なのは、どの成分もシステム内で凝縮しない温度設定と、十分な耐熱性があるカラムを選ぶことです。第2回第3回第4回もぜひご参照頂き、カラム選択の最適解を導きましょう!