GCカラム選択の最適解【第2回】カラム選びに欠かせない視点、極性
8 May 2025第1回の「沸点」に続き、第2回ではGCカラム選択で重要な役割を果たす、化合物の「極性」について解説します。第1回の「沸点から始める最適なカラム選び」に記載したプロセスを振り返ってみましょう。
4つのGCカラム選択基準:
1. 分析対象化合物の沸点(第1回)
2. 分析対象化合物の極性(および該当する場合はサンプル/標準溶媒の極性)(第2回)
3. 分析対象化合物の濃度、カラム容量、検出器の種類(第3回)
4. その他、選択肢をさらに絞り込むための詳細情報(第4回)
使用すべきカラムの選択肢を上記の基準によって、以下のような4つのカラムカテゴリに分類します。
4つのカラムカテゴリ:
A. ガス分析用カラム(炭素およびゼオライトモレキュラーシーブ、多孔性ポリマー、シリカゲルなど)
B. 揮発性化合物用カラム(Rtx-VMS, Rxi-624Silms, Rtx-502.2など)
C. 半揮発性化合物用カラム(Rxi-5Sil ms, Rxi-35Sil ms, Rxi-17Sil msなど)
D. 高温用カラム(MXT-Biodiesel, MXT-1HT, MXT-2887など)
まず、化学的な(分子の)極性について簡単に説明しましょう。最も極性の低いものは、直鎖炭化水素(対称的なC-H結合、非極性共有結合)であり、極性の高いものは、アルコールや水(非対称的なO-H結合、極性共有結合)です。
Chemical polarity(英語Wikipediaページ)
【非極性】メタンの構造 (出典:Wikipedia)
【高極性】メタノールの構造(出典:Wikipedia)
極性を理解したら思い出して欲しいのは、「似た者同士はよく溶ける」ということです。分析の際に重要なのは、標準試料の前処理に使用する溶媒の極性を把握し、相互に類似させることです。結果として、安定した溶解が得られます。直鎖炭化水素(非極性)の前処理に、ヘキサン、トルエン、二硫化炭素のような非極性溶媒を使用するのが良い例です。
化合物や溶媒の極性に関する情報が得られるサイトもありますので、ご参照ください(外部リンク)。
Properties of organic solvents
Physical properties of common solvents
カラムの選択肢を絞り込む際は、まず最初に分析対象成分の極性に類似したカラム液相を選びます。この結果、試料と液相の溶解力が高くなり、測定物質の保持が高くなります。測定物質とカラムの極性が違う場合、液相に対する溶解力が低くなり、ピーク形状の異常(例えば、スプリットピーク)などが発生する可能性があります。
サンプル/標準溶液の溶媒として推奨されるのはアセトン、塩化メチレン、ヘキサンのようなGCカラムに適した溶媒です。スプリットピークやテーリングピークのようなクロマトグラフィー上の問題が発生する可能性を最小限に抑えることが可能です。逆に避けた方がいいのはクロロホルム、アセトニトリル、水のようなクロマトグラフィー上の問題を発生させる溶媒です。
最後に、4つのカラムカテゴリ別の、極性の異なるGCカラムを以下のとおりご紹介しておきます。
A. ガス分析用カラム
非極性/低極性:Rt-Q-Bond, Rt-QS-Bond, Alumina/KCl, HayeSep Q & D, Chromosorb T
中極性:Rt-S-Bond, HayeSep C, R & S, Alumina/Na2SO4 & MAPD
高極性: Rt-U-Bond, HayeSep B, N & T
B. 揮発性化合物用カラム
非極性/低極性:厚膜Rtx-1およびRtx-5, Rtx-Volatile Amine
中極性:Rtx-VMS, Rtx-502.2, Rtx-624, 厚膜Rtx-1301およびRtx-200
高極性:Stabilwax(DA および DB を含む)およびRtx-Wax
C. 半揮発性化合物用カラム
非極性/低極性:薄膜Rxi-1ms, Rxi-5ms, Rxi-5Sil ms, Rxi-XLB
中極性:Rxi-17 (および17Sil ms), Rxi-35Sil ms, Rtx-50, 薄膜Rtx-200
高極性:NA
D. 高温用カラム
非極性/低極性:Rxi-1HT, Rxi-5HT, MXT-バイオディーゼル, MXT-1HT, MXT-1 SimDist
中極性:MXT-65TG
高極性: NA
第1回と第2回でご紹介した選択基準は迅速なカラム選択の一助となっていると思います。第3回では、カラム容量および検出器の選択によってカラムの選択肢絞り込みをさらにブラッシュアップします。第3回もぜひご参照ください。