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GCカラム選択の最適解【第3回】カラム容量および検出器の感度特性と直線性

8 May 2025

第3回では、GCカラム容量(サンプル負荷容量)、検出器の感度特性、および検出器の直線性、という3つの視点から、最適なカラム選択のポイントを解説します。このブログを読む前に、ぜひ第1回、第2回もご参照下さい。

GCカラム選択の最適解  第1回:沸点から始める最適なカラム選び

GCカラム選択の最適解  第2回:カラム選びに欠かせない視点、極性

1.カラム容量(サンプル負荷容量)とは何か

カラム容量(サンプル負荷容量)は、カラムの内径(ID)と膜厚(µm df)によって決まります。一般的に、同じ内径のカラムでは膜厚が厚いほどカラム容量は大きくなり、例えば膜厚1.0µmのカラムは0.5µmのカラムの約2倍の容量を持ちます。ただし、カラム容量は分析対象化合物がカラムの固定相に溶解する度合いにも依存します。そのため、溶解性が低い場合カラム容量は小さくなり、内径のみがカラム容量の決定因子となります。chart

カラム容量が大きいカラムは多量のサンプルを導入できるため、検出器の直線範囲内での定量が容易になります。しかし、内径や膜厚が大きいカラムはピークが広がりやすく、感度低下やカラムブリード増加のリスクもあります。分離対象の化合物によってカラム膜厚を選択し、過剰なカラム容量を避けることが望ましいです。

2.(質量分析計以外の)GC検出器の感度特性

以下で説明するTCD を除き、一般的なGC検出器はキャピラリーカラムと使用する際に問題ない感度特性を持っていると言えるでしょう。ただし、GC検出器には多種多様なものがあり、それぞれ異なる化合物クラスに対し高い感度を持ちます。代表的な検出器の感度特性は以下の通りです。

•    FID(火炎イオン化検出器):炭素-水素結合を持つ有機化合物に高感度 C-H結合が多いほど感度は向上
•    ECD(電子捕獲検出器):有機ハロゲン化合物に極めて高感度 感度の順はI > Br > Cl > F
•    NPD(窒素リン検出器):窒素またはリン含有化合物に特異的に高感度
•    FPD(炎光光度検出器):硫黄やリン含有化合物に特異的に高感度
•    PID(光イオン化検出器):PIDランプの出力よりもイオン化ポテンシャルが低い化合物に限定して検出可能

•    TCD(熱伝導度検出器):理論上はキャリヤーガス以外の全化合物を検出可能 一般的なGC検出器中、感度は最も低い 0.53mmID以上のキャピラリーカラム(またはよりIDの大きいマイクロパックドもしくはパックドカラム)の使用を推奨(カラム容量を確保するために)

これらの特性を踏まえ、検出器の線形範囲に合ったカラム容量を選択することが、定量精度向上に不可欠です。

3.検出器の直線性

分析対象化合物に対する検出器の直線性範囲について検討します。検出器の感度が不十分、または過度に高感度である場合、直線性を確保し、再現性の高い検量線を得るためにサンプルサイズや濃度の調整が必要です。理想的な検量線は以下のような直線的に比例する形状です。

以降に示す検量線のすべてに関して、Y軸はレスポンスを表し↑の方向で大きくなりX軸は濃度を表し→の方向で大きくなります。

  
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分析対象化合物が低濃度の場合、検出が難しい、またはマトリックス干渉があると、検量線は以下のようになります。


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分析対象化合物が高濃度の場合、検出器が過負荷の状態になると、検量線は以下のようになります。


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4.β値(相比)を活用したカラム選択

第1回でも触れた、カラムの内径と膜厚の比率を示すβ値(相比)は、カラムが揮発性または半揮発性のいずれに適しているカラムかを判断する際や、固定相は同じで内径が異なるカラム間で保持時間や溶出順を類似させるために使われる指標です。例えば、30 m×0.53 mm ID×1.0 µm膜厚のカラム(β=128)から、30 m×0.25 mm ID×0.5 µm膜厚(β=125)に切り替える際、カラム容量が適切であることを確認し、β値を基準に選択すれば、分析条件の大幅な変更を避けられます。ただし、キャリヤーガス流量や検出器のガス(特にメイクアップガス)流量、オーブンプログラムの調整も必要となるため、総合的な条件最適化は重要です。

第1回第2回そしてこの第3回で使うべきカラム選択肢の絞り込みができたのではないでしょうか?もしまだ情報が足りないと感じているようでしたら第4回でさらなる情報を見つけて下さい!

お読みいただきありがとうございました。