[5] クロマトグラムからわかること ピーク形状: 溶媒ピークのテーリング
11 May 2013クロマトグラムは指紋のようなものです。クロマトグラムを”読む”ことができれば、その原因を推測することができます。このシリーズでは、ユーザーの皆様からいただいたGCのクロマトグラムを示し、そこに現われている現象の潜在的な原因について説明しましょう。そして解決策を考えてみましょう。
図1.溶媒ピークのひどいテーリング
図1のような溶媒ピークが見られました。新しいカラムを取付けた直後で、ひどくテーリングしています。溶媒はテーリングしますが、通常は樹木の幹のように見えます。ピークのテーリングは、メインの注入が終わった後から、残っていた溶媒分子が入っていくことで生じる場合もあります。このようなテーリングは大抵、デッドボリュームによって引き起こされます。
デッドボリュームの原因:
接続部分でカラムの端がきちんと合っていない場合:カラムの切断面が垂直になっていない場合もあります。セラミックカラムカッターを確認し、図2に示したような良好な切断面になるようにしてください。
カラムが正しい位置に取付けられていない場合:注入口(ライナーに対して)での取付け位置が正しくない場合や検出器でのカラム位置が悪い場合。装置メーカーのマニュアルで正しい取付け方を確認してください。
スプリットレス注入で、注入後もスプリットラインが閉じたままの場合:スプリットレス注入では、一定注入時間経過直後に注入口内をフラッシュする必要があります。スプリットラインが汚れによって詰まっている場合もあります。
ユニライナーとの接続がきちんとシールされていない場合: ユニライナーを直接注入法に使用する場合、カラムとライナーの接続がきちんとシールされている必要があります。適切にシールされていないと、溶媒の一部が漏れ出てテーリングの原因となります。
その他の考えられる原因:
注入口の温度が低い場合。これはサンプルの移動に影響します。 注入口温度を確認してください。
ライナーに対して溶媒量が多すぎる場合; この場合、溶媒はライナーからバックフラッシュし、キャリアガスラインへと入ってしまいます。これにより、メモリ効果やキャリーオーバーも発生します。ライナーが対応できる溶媒の最大気化容量を確認してください。また、溶媒気化容量は溶媒の分子量に依存することに留意してください。注入量を減らすか、ライナーの内径が大きいものを使用してください。
カラムが溶媒に対して活性を示す場合。これは極性溶媒(メタノール)で起こり得ます。カラムのブランドにもよりますが、多かれ少なかれ生じる問題です。Rxi-シリーズのような新しい世代のカラムは、それ以前のものに比べると不活性な傾向があり、ピーク形状は改善されます。また、カラム取付け時にグラファイトくずがカラムに入ってしまった可能性もあります。グラファイトフェラルを取付け後、カラムは1~2 cmカットしてください。
テーリングが改善されない場合、カラムがサンプルマトリックスやキャリアガスのコンタミネーションによって活性化されている可能性もあります。ガードカラムやキャリアガスフィルターの検討も必要に応じておこなってください。
The original blog was published on May 12, 2013 @ 20:34 .