リークディテクタのリチウムイオンバッテリー
17 Nov 2016近年、リチウムイオンバッテリーについて多くの報道がありますが、肯定的なものばかりではありません。充電中や操作中に火災を起こした製品は、飛行機からホバーボート、
携帯電話まで様々です。これらの問題は、セルの構造や保護回路が損傷した場合に発生します。保護回路は、過電圧や低電圧(過放電)を回避する役割を果たします。
過電圧
充電電圧がセル電圧の推奨上限値、通常4.2V(Restek リークディテクタでは4.275V)を超えた場合、過剰な電流が流れ、2つの問題が生じます。
- リチウムめっき
過剰な電流が流れると、リチウムイオンはアノードのインターカレーション層間に迅速かつ十分に収容されず、アノード表面に蓄積して金属リチウムとして析出します。これはリチウムめっきとして知られています。その結果、遊離リチウムイオンが減少して不可逆的な容量損失が生じ、さらにこのリチウムめっきは必ずしも均一ではなく、樹枝状の形となり最終的に電極間にショートを生じる可能性もあります。リチウムめっきは低温での操作によって引き起こされる可能性もあります。
- 過電流はまた、セルのジュール熱を増加させるため、温度の上昇さらには過熱を伴います。
低電圧/過放電
充電式リチウム電池は過電圧だけではなく低電圧も問題となります。過放電もしくは長期間の保存によって、セル電圧が約2V(Restekリークディテクタでは2.3V)以下になると、電極材質の崩壊が起こります。
- アノード:まずアノード集電体の銅が電解液中へ溶解します。これはセルの自己放電率を増加させます。ところが電圧が再び2Vを上回ると、電解液中に拡散した銅イオンは必ずしも元の集電体へ戻るわけではなく、いたるところに金属銅として析出します。これは最終的には電極間のショートを引き起こす危険な状態です。
- カソード:電圧が2V以下の状態で長期間保存された場合、カソードのコバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムから酸素が放出され、その結果恒久的な容量損失というサイクルが繰り返されてカソードが劣化します。リン酸鉄リチウム電池では、これが数サイクルで起こることがあります。
上記のようなリチウムイオン電池の性質は、リークディテクタのバッテリー寿命や、お客様及びお客様の施設に悪影響を与える可能性があります。そのため、リチウムイオンバッテリーには保護回路が備わっています。
「Restekのリークディテクタを使用していますが、なにか影響がありますか?」というご質問があるかもしれません。保護回路があるため、過充電や加熱の心配はありませんが、ご注意いただきたいのは、2.3V以下までバッテリーを放電してしまうと、保護回路が作動し、再充電できなくなるということです。
「では、そうならないためにどうしたらよいですか?」というご質問もありますが、リークディテクタはたまに使用するものではなく、GCやラボのガス配管の漏れチェックのために日常的に使用するものです。
日常的に確認していただくカ所としては、次のようなカ所があげられます:
セプタム及びセプタムナット、ウェルドメント、注入口へのガス配管、リデューシングナット、カラムナット、ガスフィルターの接続、ガス配管、レギュレーター
日常的な点検の一環としておこなうことで、リークを早期に発見でき、カラムが壊れるのを防げますし、貴重なガスを無駄にすることもありません。リークディテクタを定期的に使用すると、定期的に充電する必要があります。リークディテクタは少なくとも3~4ヶ月ごとに充電する必要がありますが、実際にはもっと頻繁に充電する、もしくは使用していないときは充電しておいた方がよいものです。バッテリーには保護回路があるので、過充電の心配はありません。
References