コアシェルカラムとは?どんなときにRaptorコアシェルカラムを使うべき?
9 Sep 2024The original English blog was posted on September 26th, 2014 by Nancy Schwartz.
はじめに~コアシェルとは?
コアシェル粒子(SPP: Superficially Porous Particles)は全多孔性粒子と比較して、高い理論段数が得られるという特徴を持ちます。しかし、全多孔性粒子に比べるとその歴史は新しいので、コアシェル(SPP)タイプのLCカラムをこれから使ってみる、というクロマトグラファーも一定数いらっしゃるでしょう。そこでこの記事では、コアシェル(SPP)初心者に向けて、その基本構造と特徴について簡単にわかりやすく解説します。この記事を読めばコアシェルの概要について理解できます。
コアシェル粒子(SPP)の基本構造と利点
コアシェル(SPP)は、シリカベースの粒子ですが、粒子内部に無孔性固体の核(コア)を持ち、その周囲に多孔質の外殻(多孔質層)を有する構造をしています。このコアと多孔質層から構成されるコアシェル粒子は「表面多孔質粒子」とも呼ばれており、RestekのRaptorコアシェルカラムの場合、粒子径2.7µmのカラムは直径1.7µmのコアに0.5µmの多孔質層が、また、直径5µmのコアシェル粒子は3.3µmのコアに0.6µmの多孔質層が含まれています。コアシェルを分離の場として考えたとき、この構造においては、粒子内部のコアは無孔性なので分子は通り抜けできず、分子の通り道は外殻である多孔質層のみに限られます。この特徴的な構造がLC分析においてどのような利点をもたらすのでしょうか?先に結論を述べると、コアシェル粒子は、LC(液体クロマトグラフィー)で使用される従来のシリカカラム(全多孔性シリカ粒子を用いたカラム)に比べて、システム圧力を上げることなく、カラムの分離効率を上げることができます。
コアシェルはなぜ圧力が上がらないのか?
コアシェル(SPP)カラムの最大の利点ー背圧を上げることなくカラム効率を上げることーについて、もう少しイメージしやすくするために具体的に説明すると、例えば2.7umのコアシェル粒子の場合、従来の2.7um全多孔性シリカLCカラムに近い圧力で、UHPLCカラム(1.9µmの全多孔性粒子)と類似した分離を得ることができます。なぜ分離は良くなるのに、圧力は上がらないのでしょうか?通常、カラム圧力は粒子径に依存しており、粒子径が小さいほど、流体の流れに対する抵抗が大きくなって圧力が上がる一方、カラム内の粒子構造(コアシェルか全多孔性かどうか)自体は圧力に大きな影響を与えないからです。例えば、同じカラムサイズを使用した場合、粒子径が同じであれば、コアシェルカラムも全多孔性カラムを同程度の圧力を示します。しかし一方で、分離には違いが見られ、コアシェルカラムの方が優れた分離を示すでしょう。
コアシェルはなぜ分離が良いのか?
では、なぜ分離が良くなるのでしょうか?分かりやすく簡潔に説明すると、コアシェル粒子は多孔質層が少ないので、そこを通り抜ける分子の移動時間が大幅に小さくなり拡散が抑えられるからです。もう少し違う言い方をするならば、粒子全体が通り道となる全多孔性シリカカラムに比べると、コアシェルはコアの外側にある薄い外殻層だけが分子の通り道になるので、分子が広がらずに検出器に届くのです。つまり、Van Deemter式の拡散に関連する項が小さく抑えられた結果、カラムの分離効率が向上するのです。この詳細については、Webサイト上のFAQをご参照ください。また、ご好評いただいているRestekのコアシェルタイプのRaptorカラムについては、こちらの製品紹介ページをご覧ください。
どんなときにコアシェルカラムを使うべき?
現在実施している分析で分離を改善したい、けれども粒子径を小さくしたり、カラムを長くしてしまうと使用している装置の耐圧が心配、またはあまり背圧が高い条件では分析したくない、というときは是非コアシェルカラムの使用を検討してみてください。Restekではデモカラムも提供していますので、お気軽にこちらからお問い合わせください。
コアシェルの粒子選択に迷ったら
コアシェルカラムを使ってみたいが、どういったものを選べば良いのかわからない場合は、まず、粒子径の選択から考えてみると良いかもしれません。「コアシェルLCカラムの粒子径選択に迷ったら」というタイトルの記事では汎用的な粒子径サイズを例に、粒子径選択のポイントについて解説していますので、そちらも是非ご覧ください。お読みいただきありがとうございました。