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PFASコンタミネーションと分析における干渉の原因と対策

22 Jan 2025

世界中のいかなる場所もPFASによって汚染されていますが、さらに懸念されるのは、それがヒトの体内でも検出されるという事実です。最近見つけた記事(「ヨーロッパのティーンエイジャーは多くのPFASに晒されている」 - ChemSec )では、ほぼすべてのヒトにPFASが検出される、と書いてありました。この記事で最も印象的だったのは、「PFASは環境や人体における残留性が非常に高いため、曝露を止める方法は見つかっていない」という記述です。この問題は非常に深刻であり、解決には多くの課題が存在します。

そのため、ラボでの作業においても、PFASによるコンタミネーションが広範囲に及ぶ可能性があります。分析メソッドの開発中、多くの分析者は、分析メソッドの検出限界(MDL)未満のクリーンなブランクサンプルを得ることが困難であると感じているのではないでしょうか?

最近、6:2フルオロテロマー硫酸(6:2 FTS)およびその代替物質であるM2-6:2 FTS(ナトリウム1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-(1,2-13C2)-オクタン硫酸塩)が、サンプル調製製品(バイアル、SPEカートリッジ、シリンジフィルターなど)においてコンタミネーションの可能性があるとの報告が複数寄せられました。これを受けて当社がこれらの製品をテストしたところ、以下の製品には6:2 FTSのコンタミネーションは確認されませんでした:

バイアル(カタログ番号:23246)
SPEカートリッジ(カタログ番号:28470)
シリンジフィルター(カタログ番号:23987) 

では、なぜ顧客がコンタミネーションを疑ったのか。その原因はEPA Method 8327に記載された干渉のメカニズムにある可能性が高いことがわかりました。EPAはすでにこの問題をすでに認識しており、EPA Method 8327, Section 4.5においてその解決策を説明しています。このメソッドでは、以下のように記載されています:

ネイティブ4:2 FTS、6:2 FTS、8:2 FTSが高濃度に存在する場合、これらのネイティブターゲット成分(試料中に自然に存在する化合物)が、サロゲート(M2-4:2 FTS, M2-6:2 FTS、および M2-8:2 FTS)のSection 17.0のTable 2に記載されているPrimary Product ion 信号に干渉を引き起こします。この干渉は、ネイティブFTSターゲット成分中の34S同位体(32Sに対して4.2%程度の存在比)の天然存在比に起因し、これによりサロゲートの回収率が実際よりも過剰に高く検出される可能性があります。これらのサロゲートの定量にTable 2に記載のSecondary Product Ionを使うことで、この干渉を最小限に抑えることができます。Secondary Product Ionでは、サロゲートから13C2標識のフルオロカーボン側鎖が脱離し、32SO3H⁻(m/z 81)が生成されます。一方で、ネイティブターゲット成分の34S同位体は、同じ整数質量のプレカーサイオンから34SO3H⁻(m/z 83)を生成します。このため、Secondary Product Ion (m/z 81) を使用することで、ネイティブターゲット成分による干渉を効果的に軽減できます。たとえば、M2-6:2 FTSの定量にはm/z 429/81を使用し、m/z 429/409は使用しないことが推奨されています。(これにより、ネイティブ6:2 FTSの高濃度存在による干渉が軽減され、より正確な定量が可能となります。)」

(EPA method 8327, section 17.0, table 2
8327.pdf (epa.gov)

PFASを測定するための他のメソッドについて、それらのメソッドがフルオロテロマーのバイアスにどのように対処しているかを以下にまとめました。

メソッド

化合物

1st MRM Transition 

2nd MRM Transition

コメント
EPA 1633 (第2のドラフトメソッド,  2022年6月)

M2-6:2 FTS

429.1 → 80.9 (parent ion → quantification ion)

429.1 → 409.0 (parent ion → confirmation ion)

標識化合物と分析対象成分の定量イオン(quantification ion)と定性イオン(confirmation ion)の入れ替え。

6:2 FTS

427.1 → 407.0 (parent ion → quantification ion)

427.1 → 80.9 (parent ion → confirmation ion)

EPA 533

M2-6:2 FTS

429 → 409 (precursor ion → product ion)

n/a

分析対象成分と標識ISTDの両方について、Primaryのトランジションのみ。

モニタリングすべき干渉やSecondaryのトランジションに関する言及なし

6:2 FTS

427 → 407 (precursor ion → product ion)

n/a

EPA 8327

M2-6:2 FTS

429 → 409 (precursor → primary product ion)

429 → 81 (precursor → secondary product ion)

2019年版でM2-6:2標識 FTSのSecondaryのトランジションはないが、2021年版ではSecondaryのトランジションを追加。

M2-6:2FTSや他の化合物では、回収率限界70~130%は狭すぎる可能性があり、定量にm/z 81を使うことで、干渉を減らすことができると言及。

6:2 FTS

427 → 407 (precursor → primary product ion)

427 → 81 (precursor → secondary product ion)

EPA OTM-45

M2-6:2 FTS

429 → 409 (precursor ion → primary product ion)

429 → 81(precursor ion → secondary product ion)

6:2 FTSのSecondaryのトランジションなし。

6:2 FTS

427 → 407 (precursor ion → primary product ion)

n/a

ISO 21675:2019

M2-6:2 FTS

429 → 409 (precursor → quantifier)

429 → 81 (precursor → qualifier)

定量イオンと定性イオンの切り替えなし。

6:2 FTS

427 → 407 (precursor → quantifier)

427 → 81 (precursor → qualifier)

ASTM D7979-20

M2-6:2 FTS

429 → 408.9 (primary transition)

n/a

M2-6:2 標識FTSのSecondaryのトランジションなし。

6:2 FTS

427 → 406.9 (primary transition)

427 → 80.9 (confirmatory transition)

ASTM D7968-17a

M2-6:2 FTS

429 → 408.9 (primary transition)

n/a

M2-6:2標識 FTSのSecondaryのトランジションなし。

6:2 FTS

427 → 406.9 (primary transition)

427 → 80.9 (confirmatory transition)

**メソッドは常に更新されています。常に最新版を使用してください。

 

1Method 8327: 液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)によるペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)