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コアシェルLCカラム(Raptor)の粒子径選択に迷ったら…

9 Sep 2024

はじめに

コアシェル(SPP: Superficially Porous Particles/表面多孔性充填剤)カラムは全多孔性充填剤シリカカラムと比較して、高い理論段数が得られます。しかし、全多孔性充填剤シリカカラムに比べるとその歴史は新しいので、コアシェル(SPP)タイプのLCカラムをこれから使ってみる、というクロマトグラファーも一定数いらっしゃるでしょう。そこで、この記事では、汎用的な2.7 µmまたは5 µm粒子径を例に、コアシェル(SPP)初心者に向けて、実は粒子径選択のポイントにおいて重要なLC装置の仕様について解説します。この記事を読めば、使用装置に合わせて適した粒子径を選択するためのポイントが分かります。

Restekのコアシェルカラムの中で、お客様によく使用頂いているのは、2.7 µmまたは5 µm粒子径です。まず、定説としてコアシェルカラムも全多孔性充填剤カラムと同様に、2.7µm(より小さい粒子)の方が高いカラム効率が得られますが、使用する粒子径の分離性能を最大限引き出すためには、使用する粒子径に適した装置の圧力とDwell Volumeについて考慮する必要があります。では、それぞれについて詳細を解説していきます。

 

【考慮すべき事項その1-システム圧力】

2.7 µmのRaptorコアシェルカラムは、粒子径が小さいため、5 µmカラムと比較して使用時の圧力が高くなります。一般的に、全多孔性充填剤カラムでも同様に、粒子径が小さくなると圧力が増加する傾向があります。コアシェルカラムはカラム空隙率が低い傾向にありますが、それによって圧力が顕著に高くなることはありません。実際に、圧力に影響を与える主な要因は、粒子径、カラムサイズ、流量、そして移動相の特性であり、これらはコアシェル・全多孔性充填剤で共通しています。以下に、Raptorコアシェルカラムにおける流量と粒子径がカラム背圧に与える影響を示します。ちなみにこのデータは、アセトニトリル/水の移動相を使用して得られていますが、メタノール/水を用いると移動相の表面張力が高くなるので、カラム背圧は高くなります。


カラムの背圧についてはコアシェル(SPP)と全多孔性充填剤との間で大きな違いはないのですが、最適流量については少々その特性が異なります。具体的には、カラム性能がもっとも発揮される最適流量が大きく違わないのですが、コアシェル(SPP)カラムは、より広い流量範囲においてそのカラム効率を維持します。こちらにRaptorコアシェルカラムのvan Deemterプロットを示します。

 

【考慮すべき事項その2-Dwell Volume】

現在お使いのメソッドを2.7 µm Raptorコアシェルカラムに移行するなら、もう一つ考慮すべき事項があります。それはシステムのDwell Volumeです。LCシステムにデッドボリュームがあると、2.7 µmのコアシェル(SPP)カラムの利点が得られず、5 µm粒子(全多孔性充填剤やコアシェル)のカラムと比較しても、優位性が得られない場合があるのです。さらに内径の小さいカラムを使用する際にはDwell Volumeの影響が大きな懸念事項となります。Dwell Volumeが大きい場合の特徴として、バンド幅の広がりが挙げられます。Dwell Volumeを小さくするために部品交換など、装置をアップデートする方法はいくつかありますが、選択肢は限られており、最初から装置に合わせてカラムサイズ(粒子径含む)を選ぶ方が簡単で効率的でしょう。具体的には、2.7 µm Raptorコアシェルカラム、特に内径3.0 mm以下のカラムにはDwell Volumeが小さく設計されている耐圧600 bar以上のシステムを使用することをお勧めします。

内径 2.1 mm または 3.0 mm の 2.7 µm 粒子径のRaptorコアシェルカラムには以下に示すような最大圧力600bar(8700psi)以上のLCシステムが推奨されます。

  • Agilent 1200 シリーズ-RRLC モデルのみ
  • Agilent 1220 および 1260 Infinity
  • Shimadzu Prominence UFLC-XR モデルのみ
  • Thermo Ultimate 3000 -Basic Manual, Basic Automated, Binary Analytical, x2 Dual analytical および Quaternary Analytical モデル
  • Thermo Ultimate 3000 -RSLC nano, RSLC Binary および RSLC X2 Dual (耐圧700 Bar)
  • Perkin Elmer Flexar -FX-10 モデルのみ
  • ABSciex/Eksigent - microLC 200, nanoLC-Ultra and nanoLC 400 (耐圧700 Bar)

もちろん、UHPLC システム(最大使用圧力が1200bar(17,000psi))でも、2.7 µm Raptorコアシェルカラムは使用できます。

 

【5 µm Raptorカラムを選ぶのはどんな場合?】

5 µm Raptorコアシェルカラムを使用すべき場合とその理由をご紹介していきます。使用しているHPLCシステムが汎用タイプであり、最大圧力400bar/5800psi 以下の場合、2.7または3µm粒子径のカラムを使用すると耐圧の問題に直面する可能性があります。そのため、汎用タイプのHPLCシステムを用いて分離の改善を目指すのであれば、粒子径が5µmのコアシェル(SPP)カラムをファーストチョイスとしてお勧めします。5µmのコアシェル(SPP)は、使用システムの耐圧範囲内で3µm粒子径の全多孔性充填剤カラムを使用した場合と同様の分離が得られますし、Dwell Volumeについても心配はないでしょう。この他にも、弊社の記事 「LCカラムの粒子径選択がカラム性能に及ぼす影響:2.7 µm vs 5 µm 表面多孔性充塡剤(SPP)」に記載されているメリットがあります。

以下に例として挙げるような汎用タイプのHPLCシステムを使用している場合、5 µm粒子径のコアシェルカラムを選択することで従来の5 µm全多孔性充填剤タイプのカラムと比較して、分離の向上と最適化が可能です:

  • Agilent 1100 & 1200 シリーズ(上記のモデルを除く)
  • Varian 920-LC & 940-LC
  • Waters Alliance および Breeze モデル
  • Jasco 2000 シリーズ
  • Perkin Elmer シリーズ 200 & 275

上記のリストはすべてのLCを網羅しているわけではありません。一般的に、古いHPLCシステムほど定格圧力が低く、その多くは400barという制限があります。お使いの装置の詳細については、装置のマニュアルを参照するか、装置のメーカーにお問い合わせください。

お役に立てたでしょうか。データを提供してくださったInnovations ChemistのTy Kahler氏とSharon Lupo氏に感謝いたします。最後までお読みいただきありがとうございました。