SVOCのGC分析を高速化:分析時間短縮と高分離を両立する方法
19 Feb 2025前回のブログでは、重要な分離を維持しつつインデノ[123-cd]ピレンとジベンズ[ah]アントラセンを分離することの重要性について解説し、これら重要な成分の分離を損なうことなく、すべての分析対象成分が16分で溶出するメソッドについて紹介しました。その際、分析時間を短縮について説明するとお話ししたので、今回はEZGCを使った方法をご紹介したいと思います。EZGC Method Translatorを使えば、溶出プロファイルを維持しながら、あるカラムフォーマットの測定条件を別のカラムに適用する際に、最適なパラメーターへ簡単に変換することができます。このツールを用いてにどのように分析時間短縮を行うのか、その詳細について詳しく解説します。
このツールを使用すると、例えば、30 m x 0.25 mm x 0.25 µm Rxi-SVOCmsカラム(cat #16623)で使用したGC_EV1604(8270 MegaMixのクロマトグラム)のパラメータを基に、20 m x 0.15 mm x 0.15 µm Rxi-SVOCmsカラム(cat #46616)用の取得パラメータを生成できます。Figure 1に示したEZGC Method Translatorのインターフェースをご覧ください。正確なキャリヤーガス流量への変換を実行するために、結果セクションで「変換」を選択してください。
Figure 1 - EZGC Method Translatorを使用した30 m x 0.25 mm x 0.25 µm カラムから20 m x 0.15 mm x 0.15 µm カラムへのメソッド移管
「30%の時間短縮」と「溶出プロファイルの維持」を両立させるのは難しい課題のように思えます。しかし実際には、使用するカラムはいずれも非常に高い性能を持ち、同等の分離効率を発揮するため、この課題を解決することができます。30 m x 0.25 mm x 0.25 µmカラムと20 m x 0.15 mm x 0.15 µmカラムは、理論上少なくとも13万プレート以上の理論段数を持っています。20 m x 0.15 mm x 0.15 µmカラムが30 m x 0.25 mm x 0.25 µmカラムと同等の分離を維持しながらランタイムを短縮できているのか、実際のクロマトグラムを見てみましょう。Figure 2とFigure 3には、それぞれ30 mカラム(cat# 16623)と20 mカラム(cat# 46616)で取得した8270 MegaMixのクロマトグラムを示しています。
Figure 2 - 30 m x 0.25 mm x 0.25 µm Rxi-SVOCms カラムを使用した8270 MegaMixのクロマトグラム
Figure 3 - 20 m x 0.15 mm x 0.15 µm Rxi-SVOCms カラムを使用した8270 MegaMixのクロマトグラム
さらに、Figure 3に示された溶出プロファイルと重要な分離が、ProEZGC Chromatogram Modeler(Figure 4)によって非常に精度よく予測されていることにも注目してください。また、この分析に必要なオーブンプログラム(35.6°C/minで285°Cまで昇温し、その後28.5°C/minで330°Cまで昇温)にも留意してください。110V仕様のAgilent GCシステムを用いてこのオーブンプログラムを安定して実行するにはAcceleratorオーブンインサートキット(cat# 23849)の使用が必要な場合があります。また、カラム内径が0.18 mm以下の場合、20:1のスプリット比を推奨します。このスプリット比を用いることで、0.25 mm IDカラムで10:1のスプリット比を使用した場合と同等の性能を得られ、同じインレットライナーおよびキャリブレーション標準試料を使用することが可能です。また、スプリット比を2倍にすることで、カラム汚染が半減し、カラム寿命を延ばす効果も得られます。
Figure 4 - Pro EZGC Chromatogram Modelerを使用してRxi-SVOCms カラム (cat# 46616 )をモデル化した 8270 Appendix IX キャリブレーションキット
理論段数は15,000プレートほど低下しますが、20 m x 0.18 mm x 0.18 µm Rxi-SVOCmsカラム(cat# 46602)へメソッド移管した場合の分析条件をEZGC Method Translatorで作成しました(Figure 5)。この結果、ベンゾ[ghi]ペリレンの溶出時間は、30 m Rxi-SVOCmsカラムよりも約5.6分短縮されました(Figure 6)。このように昇温速度が高い場合には110V仕様のAgilent GCシステムにGC acceleratorキットを追加してください。
Figure 5 - EZGC Method Translator を使用した 30 m x 0.25 mm x 0.25 µmカラムから 20 m x 0.18 mm x 0.18 mmカラムへのメソッド移管
Figure 6 - 20 m x 0.18 mm x 0.18 µm Rxi-SVOCmsカラムで取得した8270 MegaMix クロマトグラム (cat# 46602)
Combining the GC Accelerator with a 208v (or higher) fast ramping oven allows you to use speed optimized flow translations for semivolatiles analysis that takes less than 10 minutes, but that topic deserves its own article. さらに、208V以上の高速昇温オーブンとGC Acceleratorを組み合わせることで、分析スピード改善を目的とした流量最適化が可能になり、半揮発性有機化合物(SVOC)の分析時間を10分未満に短縮できます。このような高速分析については、別の記事で詳しく解説する予定です。